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愛しては、ならない
第4章 ボーイ・ミーツ・ガール
その頃、剛は女性職員に頼まれて、菊野の乾いたシャツにアイロンをかけていた。
ピアノを弾いて居る時は何もかもをシャットアウトして、周囲から一人になる事が剛は得意だった。
周りが騒がしくても、演奏を乱される事は無い。
それなのに、あの人の高い声が耳にスッと入って来て、指を止めさせた。
「何故なんだ……?」
シャツの袖口を丁寧に仕上げて、全体にシワがないか確認する。
「華奢な人なんだな……」
小さなサイズのシャツを見て呟く。
頭から水を被り濡れ鼠になった姿を思い出すと、僅かに口元が緩んだ。
「随分と間抜けな人だな……」