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愛しては、ならない
第27章 絡み合う、蔦
あの夜、彼女と悟志が交わる様子を盗み見て、菊野の美しく悩ましい姿を見てしまってから、その映像が、彼女の喘ぎ声が常に頭から離れなかった。
自分の手で彼女を抱き締めたくて貫きたくて、彼女を甘く啼かせてみたくて仕方がなかった。
だが俺は彼女に男として見られていない……
単なる祐樹の兄役に過ぎないのだと思い、この顔に生まれた自分を憎くさえ思った。
この顔をしていなければ菊野に逢うこともなく、こんなやり場の無い恋情に苦しむことも無かったのだ、と。
一度火のついた想いを封じ込めるのは、自分にはとても出来そうになかった。
――彼女は、毎日同じ家で顔をあわせ、同じ家で眠るのだ。
会わなくなれば、この気持ちに蓋をすることもできるかもしれない。
だが、家族として生活しているのだ。
朝起き抜けでパジャマのまま新聞を取りに行く彼女の姿、シャワーの湯気や石鹸の香りを身体から漂わせる彼女、
料理をしている最中に、指を切って涙を浮かべる彼女……
色んな表情を見せる菊野に、どうしようもなく心を奪われてしまうのだ。