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愛しては、ならない
第31章 企み
「……いいさ、このくらいの痕」
俺はそっと、まだ微かに痛みの残る傷を左手の指でなぞり、昨夜の菊野を想った。
彼女が、俺との永遠を夢見て、絶望して故の突発的な行動だった。
俺は嬉しかったのだ。彼女はそれ程に俺に溺れている、という事に。
そう自惚れてもいいだろう?菊野……
この傷は、俺と菊野が確かに恋しあったという徴(しるし)――
ならば、このまま消えないで残して置きたかった。
俺と菊野は、夜明けまで抱き合って居た。
離れがたくて、空が白み始めるまでベッドで手を握りあい、見詰めて、時折キスをした。
だが、祐樹に見つかったらいけない。
俺は断腸の思いで彼女のベッドから身を起こし、自分の部屋へ戻ったのだ。