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愛しては、ならない
第31章 企み
「あれえ、菊野さん」
森本も気付いて、店の中から手を振るが、菊野は気が付かない様子だ。
俺は脈うつ胸を宥めながら、彼女を目を凝らして見詰める。
彼女は一人ではなかった。
彼女と同じ位の年齢のサラリーマン風の男に何か話しかけられて困った様な笑顔を浮かべ、所在なげにしている。
「誰と一緒に居るんだ?
剛、お前知って――」
指を丸めて虫眼鏡の形にし様子を窺う森本の言葉を最後まで聞かずに俺は店から飛び出していた。
「剛君――?」
戸惑った清崎の声が背中に聞こえたが、振り返る事もせずに一目散に彼女の元へ走る。