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愛しては、ならない
第31章 企み
「菊野――!」
彼女は、俺の声に弾かれた様に笑顔になった。
花開く様なその可憐さに、俺はまた心を奪われる。
俺の姿を認めて、そんなに嬉しいのか?
昨夜あんなに長い時間抱き締めあっていたのに、今日数時間離れたのが、そんなに寂しかったのか?
……いや……それは俺の方だ。
俺は、多分貴女よりも強く深く、恋に溺れている。
悔しいが仕方がない。
俺は最初から貴女に敵わないのだ――
彼女の隣に居る男は、俺を見て怪訝な表情をしたが、一瞬口元を緩め、彼女に訊ねた。
「――ああ、弟さん……とか?」
「……!」
彼を思わず見やると、その瞳に怯えが見えた。
俺は多分、殺しそうな目付きで睨んでいるのだ。