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愛しては、ならない
第31章 企み


「――じゃあ……剛君が菊野さんを愛しているのは……

そういう事が、好きに……出来るからなの?」


「――」


菊野の事を誤魔化すのは、無理だったのだろうか?

思わず振り返ると、彼女の瞳は聡明な光をたたえ、浅はかな出任せが通用しないという事を俺に思い知らせていた。

言葉を失い立ち尽くす俺の胸に、彼女はゆっくりと掌を這わせる。



「私を一番に好きじゃない事くらい、知ってるよ……」


細い華奢な指は、いとおしそうに脇腹を撫で、こそばゆさと居心地の悪さに俺は彼女から目を逸らすが、チクリと痛みを感じ視線を戻すと、彼女は俺の腕の傷に爪を立てていた。

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