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愛しては、ならない
第32章 企み②
(――剛さん……早く……帰ってきて……
私の元へ……帰ってきて……)
彼が彼女と連れ立って歩いていく後ろ姿を見て、それだけで嫉妬とやるせなさに叫びだしてしまいそうだったのだ。
森本が居たから平然を装っては居たが、もしも今独りで家に居たら、ソファに泣き崩れていたかも知れない。
(怪我をさせたのは私なのに……私が悪いのに)
心ここにあらずなまま台に乗り、上の棚から紅茶を出そうとするが、グラリと足元が揺れた。
「――!!」
足が浮く感覚に寒気を覚え、目を瞑ったその時、腰を力強い何かが受け止めた。
大きな安堵の溜め息と共に後ろを振り返ると、支えてくれている森本の長い睫毛に覆われた瞳が至近距離にある。
「ごっ……ごめんなさい……」
彼から早く離れなければ危険な気がして、私は身を捩った。