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愛しては、ならない
第5章 戸惑いの始まり



悟志が、肩をぎゅっと掴み耳元で囁くように言った。



「今日は……仕事はもういい」



ゾクリとして、私は顔を逸らす。

この広い家に二人きりという事実が何故かとても重く感じた。



「祐樹を……迎えに行ってきてくれる?」



「今日は向こうで祐樹を泊めてくれるそうだよ……
菊野も、疲れが出たんだろう……今夜はゆっくりしよう」



「……っ」



そっと背中を撫でるその掌と、彼の眼差しの中にまた"男"を感じて、嫌悪が沸いてくる。



「お腹が空いてないかい?お粥を作ってみたんだが……
初めてだからどんな物か正直わからないんだ……」



悟志は照れた様に盆を持ってきた。



家事が一切出来ない悟志が火を使ったという事実に、私は目を丸くした。


「だ……大丈夫だったの?ご飯が燃えて火事にならなかった……?」



悟志は吹き出した。



「はは……
火事になったらこんな風に呑気にしている訳がないだろ?」



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