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愛しては、ならない
第35章 Love is……
「菊野っ……」
その呟きと同時にズシリと彼の重みがのし掛かり、私は息苦しさをおぼえた。
時計はもう4時近くを指していた。
もう、戻らなくてはならない。
剛の部屋に居たことを、祐樹にも真歩にも知られてはいけない。
彼の腕から抜け出そうと身を捩るが、長い腕が身体に絡み付き、強く抱き締めてくる。
「行くなよ……」
泣きそうな潤んだ瞳に訴えられ、やはり決意が鈍りそうだった。
その目を真っ直ぐに見ない様にして、小さく呟く。
「……もう……戻らないと」
「……」
剛は、無言で私の身体を抱いていた腕を緩め、離した。