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愛しては、ならない
第37章 愛憎②
彼の小さな溜め息が、頬を撫でた。
思わず瞼を閉じた時、髪をくしゃりと撫でる感触と共に、ソファが揺れる。
彼は立ち上がり私から離れ、キッチンで紅茶を淹れ始めた。
「俺の好きなのにするけど、いいですか?」
私は何も言えずただ頷き、目尻を拭った。
部屋に上がった途端に襲い掛かって来ると思い込んでいた私は、拍子抜けしてソファに深く身体を沈めた。
ようやくこの部屋の景色を見る余裕が生まれて、チラチラと辺りを探るように視線を泳がし、やはり相当な高級な部屋で生活感がない、と思った。
私の家のリビングのおよそ四倍はある広さの部屋には大きなテレビと、白いテーブルとこのソファ、壁には見ているだけで頭痛を起こしそうな幾何学模様の絵画が飾ってある。