この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第38章 愛憎③
「ああ……そうですね」
俺は、彼女の拘束を緩めずに頬に軽く口付けた。
「んっ……」
いつの間にか小さな指が俺のシャツを掴み、震えていた。
何故それだけの事で俺はこんなに胸が熱くなるのか。
彼女をもっと乱したい。その唇から、欲しいと言わせたい。
艶やかな絹のような髪を指でゆっくりと触れて、もう一度口付ようとしたその時、彼女の頬には涙が溢れていた。
「菊野……?」
「……お……お願……もう……っ」
「どうしたんだ、菊野」
「離して……っ」
「菊野!」
彼女は俺の腕から逃れようともがき身体を捩り腕で胸を押すが、勿論俺の力に敵う筈もない。
いつもなら諦めて身を任せる彼女は、泣きながらも懸命に抵抗を続けている。
「も……ダメ……ダメなのっ……」
「どうしたんだ、何を言ってるんだ」
彼女は、俺を涙で一杯になった瞳で見上げ、言い放った。
「――もう……私に触れないで!!」