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愛しては、ならない
第38章 愛憎③


「ああ……そうですね」



俺は、彼女の拘束を緩めずに頬に軽く口付けた。



「んっ……」



いつの間にか小さな指が俺のシャツを掴み、震えていた。

何故それだけの事で俺はこんなに胸が熱くなるのか。

彼女をもっと乱したい。その唇から、欲しいと言わせたい。

艶やかな絹のような髪を指でゆっくりと触れて、もう一度口付ようとしたその時、彼女の頬には涙が溢れていた。



「菊野……?」


「……お……お願……もう……っ」


「どうしたんだ、菊野」


「離して……っ」


「菊野!」



彼女は俺の腕から逃れようともがき身体を捩り腕で胸を押すが、勿論俺の力に敵う筈もない。

いつもなら諦めて身を任せる彼女は、泣きながらも懸命に抵抗を続けている。



「も……ダメ……ダメなのっ……」


「どうしたんだ、何を言ってるんだ」


彼女は、俺を涙で一杯になった瞳で見上げ、言い放った。


「――もう……私に触れないで!!」





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