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愛しては、ならない
第38章 愛憎③
菊野は手足をばたつかせ首を振り、また俺を遠ざける言葉を口にする。
「離し……も……嫌……なの……っ」
「菊野、菊野……嘘だ……そんなの……嘘だろ?」
「嘘じゃないっ……」
「菊野――!」
彼女の顎を掴み強引にキスしようとしたその時、祐樹の元気な歌声と共に階段を降りる足音が聞こえてきて、二人はビクリと固まった。
その隙に菊野は俺の腕からすり抜け、リビングへと逃げようとするが咄嗟に俺は彼女の腕を掴む。
「嫌……っ」
「菊野……ちゃんと話してくれ!」
「話なんか……」
彼女と揉み合っていると、後ろから背中に軽い衝撃が襲い、俺はバランスを崩してよろめいた。
「――何をしてるんだよ」
祐樹が、脚を上げたまま怒気を孕んだ瞳を真っ直ぐに俺に向けていた。