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愛しては、ならない
第39章 愛憎④
剛は、急病ということで三日欠席していた。
森本も、菊野が訪ねてきた翌日から休んでいたのだ。
あれから彼女と連絡を取っていないが、多分剛の側で甲斐甲斐しく看病をしてやっているのだろう。
腕の中で泣き乱れ苦しそうに咳き込んでいた彼女の姿が蘇り、あれから大丈夫だっただろうか、と思った。
中学で剛と同じクラスになってから時々家に上がったが、彼女を初めて初めて見た時に、とても大人の女性に見えなくて驚いたのを覚えている。
姿が若いだけでなく、仕草や表情から滲み出る幼さが、彼女を頼りなく見せていた。
常に見張って居なければ、転んだり泣いたりしてしまうのではないかと心配になるような女性だった。
森本には母親が居ない。
彼が幼稚園に上がる前に、出ていった。
父には、母が他に男を作って出ていった、と聞かされていた。
会社をいくつも経営する父は、彼が小さな頃から滅多に家に寄り付かなかった。
雇われの何人かのベビーシッターが彼の面倒を何もかもやっていて、彼もその事を何も疑問にも思わなかった。