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愛しては、ならない
第39章 愛憎④
剛の家に上がって、菊野と剛の何気ない会話や交わされる視線を見て、森本は確信を深めていった。
あの二人は、想い合っている。
今は自覚はないとしても、互いを異性として愛し合うようになるのは時間の問題だろう。
緊張感とやるせない思慕が、隠そうとしても滲み出ている。
森本と、今は居ないかの人がそうだったのと同じように。
だが、壊れるのもはやい。
女は演じる事が得意だ。
清崎にしても、清楚な少女の中に毒婦を飼っている。
菊野は母の顔と妻の顔、そして剛の恋人の顔と、使い分けているのだ。
その事に耐えられず傷付くのは男の方だ。
「――彰、何考えてるの」
清崎に、胸元に軽く歯を立てられ、森本は物思いから褪めた。