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愛しては、ならない
第39章 愛憎④
一生懸命に彼女を慰めたりおだてたりしたが、痛みをなるべく感じずに済んで、綺麗な状態で死ねるやり方は何があるかと、彼女は真剣に考え始めた。
森本は話を聞いているうちにうんざりしてきて、つい突き放すように言ってしまった。
『本当にそうしたいなら、飛び込みでも飛び降りでもすればいいじゃないか。それが一番確実だろ。
でもこのマンションから飛び降りだけはやめてくれよ。後から警察やら何やら事情を聞きたいとか言われたりとか……
そんな面倒を掛けられるのは御免だしね』
彼女は大きな目を更に大きく見開いて、真っ青になった。
言い過ぎた、と思い、笑顔を作って
『な――んてな!』
と軽くとぼけてみたが、彼女は虚ろな瞳で宙を見詰め、ふらりと部屋から出ていこうとした。