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触手学園
第1章 始まった
「笹野君!!」
あまり聞き慣れない声が俺を呼んだ。
「何ぼーっとしてるの!早く逃げるよ!」
黒い縁の眼鏡をかけた真面目で堅そうな女が俺の腕を引っ張る。
誰だっけこの人。
あ、確か同じクラスの委員長だ。
いつも物静かで勉強ばっかしてる、正直苦手なタイプ。
この人こんなでかい声出せたんだ。
そんな事思ってる間に、腕を引っ張られながら廊下を二人で走っていた。
「おい!どこ行く気だよ!?」
「裏口から外に出よう!正面入口はきっと人が多すぎる!」
「…なるほどね」
俺は裏口も相当人がいると思うけどな。
この学園の生徒の数は本当に多い。
きっとどの出口も人が入り乱れてる。
「きゃっ!」
「は!?」
委員長は俺の腕を掴んだまま転んだ。
まじで馬鹿かこいつ。
びたっと派手に音をたてて二人でずっこけた。
その瞬間、二人の頭上を何かが風を切って通り過ぎる。
俺は寒気がして慌てて首を回しながら頭の上を見た。
「…ヤベ」
一本の触手が俺達を狙っていたみたいだ。
巻き損ねたのか空中で螺旋状に回ってうねっている。
委員長が転んでくれて良かった。
と言うかそれどころじゃない。
俺は委員長を抱き抱え、近くにあった教室に入り中から鍵を掛けた。
ドアの窓から見えるさっきの触手は、ダンダンとドアを叩いて壊そうとしている。
あんまり持ちそうにないな。
「おい委員長、大丈夫か?」
教室に入った時に投げ捨ててしまったから一応心配してやる。
「………………」
返事が無い。
冷や汗をかきながら後ろを振り返ると、委員長の姿が見当たらなかった。
「委員長?」
そんな事してる間に、触手はもう扉を破って来そうな勢いだ。
おいおい。
成す術無しかよ。
俺こんな気持ち悪いものに捕まりたくねぇよ。
心臓の音が、とてつもなくうるさかった。