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刑事とJK
第100章 根城の裏で笑う者~後編~
――――――
彼女…恭子は、至って普通の女の子だった。
周りから見ると極度に暗い人間だったそうだけど、僕はそうは思わなかった。
「あっ」
「ごめんなさ…っ」
廊下の曲がり角をすれ違った瞬間にぶつかった。
彼女の頬は
ほんのり桜色をしていた。
「大丈夫?
ごめんね、前見てなかったから…」
「いぃぇ…大丈夫です…」
ただの恥ずかしがり屋なんだ。
人前では自分を上手く表現できない、不器用な子だったんだ。
「い…急いでるんで…すいません」
彼女は頭を下げると、僕を通り過ぎて走っていってしまった。
「…」
人がどうして彼女をのけ者にするのか解らない。
それは僕にとっては
昔も、今でも、解らない…
――――
「あ、昨日ぶつかった人だ」
図書当番に当たっていた僕は、本を借りに来た彼女に笑いかけた。
彼女は顔を真っ赤にさせて
「す、すいませんでしたっ…」
本を借りずに、引き返そうとした。
「何で何で!?
借りたらいいじゃんっ」
手を伸ばしても、机が邪魔で届きそうになかった。
だから僕は、必死に彼女を呼び止めた。
「…」
彼女は目をあちこちにやってから、ようやく観念したようにこっちへ足を戻した。
「…」
黙ったまま差し出される本…表紙から、詩集なんだとわかった。
「詩とか…好きなんだね」
裏表紙に挟んであるカードにハンコを押す。
彼女はその動作を、ひたすら目で追っていた。