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気の毒な人
第1章 気の毒な人
私はいつも姉に陰湿に殴られたり強く抓られたりするたび、「もし将来漫画家になったら」と、そんな妄想を繰り広げて苦痛から逃れて生きていた。
それくらい漫画が好きだったし、漫画だけが心の拠り所だった。
だからこそ、トチ狂うきっかけとなった出来事が漫画であったことは、実に我々らしいと思う。
全く持って唐突に、その日は訪れた。
夜更け、アメリカンスタイルを貫く子育て方針により、小学1年生にして自室で1人きりで眠らされていた私の顔に何かが当たった。
すごい衝撃と痛みで飛び起きると、枕元に気の毒な人が立っていた。
人間驚きすぎると声が出ないというのは事実である。
私は陸に上がった魚のように口をパクパク動かすだけで、何も発言できなかった。
気の毒な人はチャンピオンのロゴがでっかく入ったトレーナーと、下は何やら趣味の悪い縦縞のだぼだぼしたズボンを穿いていた。
ベッドが軋んで、チャンピオンのロゴが大きく視界に写った。
気の毒な人は手を伸ばし、私の顔に命中したのち枕元に転がっていた漫画本を手に取ると、生まれて初めて私に笑顔を見せた。
「これ読めや、おもろいぞ」
気の毒な人はそう言い、私に漫画本を差し出した。
差し出すくらいなら顔に命中させる必要はなかったのでは、と一瞬考えたものの、幼い私に反発スキルなどあるはずがなく、恐怖を感じつつも素直にそれを受け取り、ぱらぱらと中身をめくってみた。
そして、背筋が凍った。
どのページも、私くらいの幼い子供と、大人の男が裸で交わっている絵ばかりだったのだ。
無意識に漫画本を投げ飛ばした私の鎖骨のあたりを気の毒な人は、まるで姉が普段私にしているようなやり方でがん、と殴った。
痛みの記憶はないが、そのあとで気の毒な人は私のパジャマのズボンをパンツごと脱がせ、大きく左右に開脚させると、そこをじーっと観察しはじめた。
それくらい漫画が好きだったし、漫画だけが心の拠り所だった。
だからこそ、トチ狂うきっかけとなった出来事が漫画であったことは、実に我々らしいと思う。
全く持って唐突に、その日は訪れた。
夜更け、アメリカンスタイルを貫く子育て方針により、小学1年生にして自室で1人きりで眠らされていた私の顔に何かが当たった。
すごい衝撃と痛みで飛び起きると、枕元に気の毒な人が立っていた。
人間驚きすぎると声が出ないというのは事実である。
私は陸に上がった魚のように口をパクパク動かすだけで、何も発言できなかった。
気の毒な人はチャンピオンのロゴがでっかく入ったトレーナーと、下は何やら趣味の悪い縦縞のだぼだぼしたズボンを穿いていた。
ベッドが軋んで、チャンピオンのロゴが大きく視界に写った。
気の毒な人は手を伸ばし、私の顔に命中したのち枕元に転がっていた漫画本を手に取ると、生まれて初めて私に笑顔を見せた。
「これ読めや、おもろいぞ」
気の毒な人はそう言い、私に漫画本を差し出した。
差し出すくらいなら顔に命中させる必要はなかったのでは、と一瞬考えたものの、幼い私に反発スキルなどあるはずがなく、恐怖を感じつつも素直にそれを受け取り、ぱらぱらと中身をめくってみた。
そして、背筋が凍った。
どのページも、私くらいの幼い子供と、大人の男が裸で交わっている絵ばかりだったのだ。
無意識に漫画本を投げ飛ばした私の鎖骨のあたりを気の毒な人は、まるで姉が普段私にしているようなやり方でがん、と殴った。
痛みの記憶はないが、そのあとで気の毒な人は私のパジャマのズボンをパンツごと脱がせ、大きく左右に開脚させると、そこをじーっと観察しはじめた。