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ここで待ってるから。
第14章 《かの子さんと里桜氏》魔王の午睡。
 久しぶりにゆっくりと起きる。

 ここ、二週間程仕事場で寝泊まりしていた。新しく、大学の後輩を呼んだのは正解だった。
 夏は昔から、勘が良く気が利く後輩。
 実際、夏がいたから今回の修羅場を乗り越える事が出来た。

 水瀬出版、唯一の絵本。

 父がこの出版社を立ち上げた時、はじめて世にだした絵本。
 私もこの絵本を読み聞かせられ育った。

 お姫様が魔法で囚われた五人の王子を助ける。かけられた魔法は愛で解けていく。最後には、魔法をかけた魔法使いをもお姫様は愛を与え、解放する。

 ゲームの物語みたいだけど、文も絵も素晴らしい。

 この絵本は初版は少ないものの、やはり幼少の頃から大切にしていたと言う人物がテレビで紹介した。
 そこから、増刷の手配や書店からの問い合わせで、殺人的な戦場になった。

 みんながこの絵本を手にしてくれるのは、とても嬉しい。
 でも、そこに父がいないのが悲しく思う。

 リビングに行くと、里桜が眼鏡をかけて新聞を広げている。

「おはよう。良く眠れた?」

 朝日の中に里桜は綺麗。

「おはよう。うん。」

「それはよかった。かの子、僕のふわっふわのパンケーキ、食べる?」

 昔から里桜は何でも出来た。勉強もスポーツも。炊事、家事。なんでも完璧。
 こんなにできる男、周りの女は放っておかないでしょうに。
 でも、今まで遊ぶ女友達はいても交際する女性の気配はなかった。
 私が知らないだけで、きっと携帯の中は女の連絡先だらけだろうな。

「ねぇ、里桜。」

 キッチンでは早速、ボールに粉や砂糖、卵を用意している。

「何?」

「…あ、いい。何でもない。」

 聞きたいことは色々あるけど、答を聞くのがこわい。

「今夜は遅いのかな?」

「ん、うん。」

 そうだ。昨夜、由岐から飲み会のお誘いが来てたんだ。

「電車で行くんでしょ?遅くなるようなら、連絡して。迎えに行くから。」

 カシャカシャ、とメレンゲを泡立て既に混ぜてある生地にサクッと混ぜる。
 弱火に熱したフライパンにその生地を落とし、蓋をする。

 小さな頃から食べている、パンケーキ。

「ハチミツとメイプルどっちかける?」

「ハチミツ。」

 私以外の人にも、女の人にも作ったりするのかな。

「朝だけど、特別にバニラアイスを乗せようか?」

 ほら、やっぱり子供扱いする。
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