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ここで待ってるから。
第14章 《かの子さんと里桜氏》魔王の午睡。
 頼まれる意味はわからない。

 時々、普通の恋愛ができたなら毎日が楽しいのかな…と思ったりする。でも、里桜の存在を抜きにしてもこの気難しい私に、恋愛が出来るとは思わない。

 しばらく、由岐を寝かせ由岐の友人達と話す。

 久々のお酒にほんのりと酔いが回る。



「…っ、今何時?」

 由岐はボーッとしながら、起き周りを見る。
 とっくに、友人達は帰り部屋には私と由岐しかいない。

「もうすぐ、最終電車なくなりそう。」

 ガバッ、と由岐は起き上がり頭を軽くおさえる。

「うっ、いてて。…ご、ごめん。」

「…大丈夫?」

 店員にお冷やをもらい、由岐にわたす。
 ゆっくり飲み干し、空のグラスをテーブルに置く。

「…私、帰る。」

 由岐が起きたのを確認し、帰り支度をする。

「お勘定はお友達がしてくれてたから。なんか、色々、誤解されたままだったけど…。」

 由岐の彼女。

 私も最後まで否定せず、話を合わせた。

「…本当に、ごめん。俺…。」

「もう、いいから。ほら、帰るよ?」

 由岐の肩に手を置いた瞬間、右腕をつかまれ引き寄せられる。
 バランスを崩し、座る由岐の胸に飛び込む。

「なっ、由岐?」

 足掻こうにも不自由な左手は役に立たず、右腕も固定され動かない。

 由岐の体温と鼓動が感じる。

「…帰さない。」

 耳元に囁く声は色を含み、私の中に響く。
 私の鼓動か由岐の鼓動かわからないくらいに、早く熱く。

「ゆ、由岐?離して。ちょっと…。冗談は辞めて。帰るから…。」

 更に、強く抱きしめる。

「…お願い。」



 時計を見ると、とっくに終電は行ってしまった。電話すれば、里桜は迎えに来てくれるだろうけど由岐をこのままにはしておけない。

 仕方なく、二人店を出て無言のまま歩く。

「ねぇ、由岐。どこ行くの?タクシーひろって、帰ろう?」

 由岐の横顔を見ると、少し怒ったような真剣な顔をしている。

「ね、ねぇ。」

「…俺、水瀬の事が好きだよ。」

 不意に立ち止まり、私を見る。
 あまりにも真剣で、何も言葉が出てこない。

「…あ、その…。そこ、寄っていこうよ…。」

 手を引かれ、肩を寄せる…。

 突然の告白に驚き、二人が向かう場所を把握する間もなく、自然に建物に入る。

 いつの間にかに、ラブホに連れられていた。
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