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ここで待ってるから。
第3章 嫉妬。
 朝、いつもより早目に起きてキッチンに立つ。
 二人分のトーストに目玉焼き、コーヒーを用意する。さっきから洗面台は夏に占領されている。

「橙子さん、髪型変じゃない?」

 前髪をしっかり上げておでこ丸出し。
 朝からお腹を抱えて大笑いする。

「あははっ。やめてよ、夏君。お腹痛い。」

 上がった前髪を軽く払うと、程よく下り涼しい目元にかかる。
 濃いグレーのスーツに白いシャツ。濃紺のストライプ柄のネクタイ。ネクタイの結び目の歪みを直す。

「大したものはないけど、食べちゃおう。」

「ありがとうございます。明日から順番に用意しませんか?」

「うん、まぁ手が空いた方でいいよ。しばらくは仕事で大変だと思うから。夏君、今日から頑張ってね。」

 夏君の勤める出版社と私の勤務先は以外と近く、駅一つしか違わない。朝は一緒に通勤し、帰りは早い方が夕飯を用意する事になった。

 玄関でヒールを履いていると、夏が身をかがめる。フッと顔をあげると夏の顔が近くにある。

「勇気の出るおまじない。」

 そう言いながら、キスをされる。

「…なっ。」

 顔が熱くなり、耳まで赤くなる。
 クスクス笑い、夏も革靴を履き二人で駅に向かう。



「ねぇ、ねぇ橙子聞いた?」

 朝のオフィスで始業前の用意中、同僚の田畑沙矢子が寄ってくる。
 沙矢子は私と同期で仕事のライバルであり、良き相談者。また、数少ない友人。

「なぁに?また、噂話し?」

 沙矢子が耳打ちをする。

「深山さん、今回の企画が成功したら最年少係長就任らしいよ?」

 まぁ、三十歳で係長なんて、出世コースにしっかり乗った感じよね。涼介のマーケティング力、企画力はかなりこの会社の戦力だし。

「あと、もう一つあるんだけどなぁ…。」

 沙矢子がなんだか含みを持たせ、私に躙り寄る。

「秘書課の真崎奈央が深山さんにアタックしてるみたいよ?」

 あ、そうなんだ。

 昨日のデートがなかったら、また私はやさぐれてたかも。涼介が私を好きなのを確認出来たから、サラッと流せる。

「あれ?反応薄くない?」

 私と涼介が付き合っているのを、沙矢子だけが知っている。沙矢子の目がやたら輝いてるのが気になる。







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