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ここで待ってるから。
第16章 嘘つき達の夜。
『貴女はつまらない女ですって。石黒が言ってたわよ。』

 薄気味悪い声がする。
 頭に響く、二度と聞きたくない声が。

『私と石黒が二股してても、怒りも泣きもしないって。付き合っている意味あるのかしら?』

 あの女が嗤う。
 真っ赤な唇に、白い歯。
 病的な青白い肌。

『あの人に、貴女のどこが良いのか聞いてみたのよ。ねぇ、知りたい?』

 動悸が激しくなる。

 私は、いつだって叫んでいた。あの人をとらないで。あの人を返して。私だけの、あの人を。

 でも、私にはすがる術を知らない。

 ただ、ただ耐えるだけ。


「…さん。」


 下唇を噛み、うっすらと血がにじむ。

「と、うこ、さん。」

 肩に手が置かれる。
 その、温かさと重みに我に帰る。

「橙子さん。大丈夫ですか?」

 振り向くと、心配そうに私をみつめる遠山さんがいた。

「…は、はい。」

 時間にしたら数秒の事なんだろう。

 心臓が激しく打つ。手のひらに、滲み出る汗。

 夏と胡桃ちゃんも顔を出す。
 さっきの行動は、二人にとって他愛もない事。子供の遊びの延長のように。

 久々のフラッシュバック。

 涼介の時はほとんど思い出さなかった。
 多分、身体の関係があっても、お互い深入りはしていなかったんだと思う。

 今は、夏が私の身体に侵食している。

 彼がいなくては、生きてはいけない。
 なのに、素直に甘えられない。

 嫉妬しているのに、声に出せず心を殺す。

 …ああ、また繰り返し。


「橙子さん、大丈夫ですか?これ。」

 夏は冷たいタオルを私に差し出す。
 少し落ち着き、その冷たさに息を吐く。

「…うん、ありがとう。」

 胡桃ちゃんと遠山さんは食事のしたくをしている。

 夏は私の横に座り、手を握る。そのうち、指を絡めてその温もりに安堵する。

「…橙子さん。」

「もう、大丈夫だから。さて、そろそろお腹すいたね。胡桃ちゃんの料理、楽しみだな。」

 テーブルの上には、板わさや漬け物。サラダにチーズが可愛らしく用意されている。

「橙子さん、飲めますか?」

 胡桃ちゃんが、缶ビールを持ってきて私に渡す。

「うん。ありがとう。」

 冷たい缶を受けとる。
 夏の手は離れず、力がこもる。



『つまらない女だけど、ヤルだけの女としてなら最高だよ。って、言ってたわ。』
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