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ここで待ってるから。
第16章 嘘つき達の夜。
 四人で談笑し、楽しい時間が過ぎていく。

 時々、夏に心配そうに表情を覗かれる。その度に、申し訳なさと嬉しさが入り交じる。

「…あー、もう。東先輩、私のウーロン茶飲まないで下さいよ。私の飲み物、ないじゃないですかー。」

 胡桃ちゃんにはお酒を飲ませないでいた。
 夏は悪びれた風もなく、少しだけ残っていたウーロン茶を飲み干す。

「まぁまぁ。ごめん、ごめん。近くにコンビニある?買いに行ってくるよ。」

「本当ですか?あ、じゃあ何かデザートも!」

 夏は立ち上がり、出掛ける用意をする。

「コンビニまで近道があるから。胡桃、東君を案内してあげなさい。」

「はーい。橙子さんはどんなデザートがいいですか?」

「うーん。じゃあ、アイスがいいな。シャーベット系の。」

「了解しました。東先輩のおごりですからねっ。」



 騒がしく二人が出て行った後は、静寂が訪れる。

「橙子さん。」

 遠山さんは焼酎の入ったグラスを揺らし、私に話しかけてきた。

「お願いがあるんです。」

 真剣な眼差しを受け、少しだけ戸惑う。

「…振りをしてほしいんです。」

「振り?何のですか?」

 遠山さんは私から視線を外す。

「僕と橙子さんが…。お付き合いしている、振りです。」

 酔っているせいで、頭が働かなく意味がわからなかった。
 少しずつ冷静になってくると、遠山さんが何を考えているのかわからず悩む。

「…最近、胡桃の態度がおかしいんです。いや、先日の僕の誕生日から…。」

 大泣きで私のところに来た日の事ね。
 確か、遠山さんは誰かを好きなんだ、とか付き合っている、とか言ってなかったかしら?

「薄々、感じてはいたのですが。どうやら、僕と本当の兄妹ではない事を知っているようで…。」

 あ、そう言うことか。

 遠山さんの誕生日に綺麗になって、デートしてプレゼント用意して。
 それって、妹としてじゃなくて…。

「僕としては、胡桃を家族として大切に思っています。いや、思いたいんです。」

 眼鏡の奥には困ったような、悲しい表情。

「でも、それは…。」
 
 隠しきれるものじゃない。誤魔化されはしない。

 愛情とか恋心とか、溢れる思いは決して閉じ込める事なんて出来ない。

 昔の私みたいになっては駄目。

 求めているのに、自分の心を殺してしまった。そんな自分に。
 
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