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ここで待ってるから。
第16章 嘘つき達の夜。
「遠山さんの本心はどう、思っているんですか?」

 空になったグラスに氷を入れる。
 焼酎を水で割る。

「どう?とは?」

「…胡桃ちゃんがの事、好きなんですよね?…男性として。」

「…確かに。男として、胡桃の事が好きです。でも、それ以上に、家族として生きてきた年月がすべてです。」

「それは、建前ですよね?」

 遠山さんは溜め息を付き、眼鏡を外す。目頭をを押さえ考え込む。

「…怖いんです。」

 少しだけ言葉を選ぶ。

「拒否されるのが。このまま、告白をして断られた後の事を考えると…怖いんですよ。女としても、妹としても自分の前からいなくなってしまうのが…。怖いんです。」

 自分と遠山さんの気持ちを合わせる。

 素直になれない。
 それでも、求める思いは尽きない。
 繰り返される、自問自答。

 どちらにしても、後悔するなら…。

 ふっ、と遠山さんの手が私の頬に伸びる。冷たい指先。

「…橙子さん。」

 親指が私の唇に触れる。

「東君との恋愛に戸惑っている貴女なら…。」

 お互いの顔が近付く。

「僕の気持ち…分かってくれますよね?」

 確かに、イトコとの恋愛はまだどこか怖い。
 まして、年下では尚更。

 いつも、迷いながら、手探りしながらの恋愛に自信が持てないでいる。

 過去のトラウマか、上手に甘えられない。そんな自分の恋愛が面倒くさくなる。その、繰り返し。

「…だから、もしよければ僕と付き合いませんか?…最初は振りでもかまわないので。きっと、二人なら、僕と貴女なら分かり合えると思うんです。」
 
 それは、傷を舐め合いながら、恋愛すると言うこと?

 私と遠山さんは、似てるけどまったく違う。
 私は胡桃ちゃんにはなれないし、遠山さんは夏にはなれない。

 昔の私なら、決して言わなかった。
 誰にも言えず、心で叫ぶだけだった。

 でも、今は違う。

 夏が私を本当に好きでいてくれるから。

 私が夏を心から好きだと思える人だから。

「私は夏だけのモノです。決して何があっても、それは揺るぎません。この先、まだ迷ったり立ち止まったりすると思います。でも、夏は私を待っていてくれる。」

 遠山さんの指先が震える。

「私は、何も怖くないです。自信をもって、夏にすべてを託すことができます。だから、遠山さんも、貴方が好きになった人を信じて。」
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