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ここで待ってるから。
第16章 嘘つき達の夜。
 遠山さんがいきなり、私を抱きしめる。

 痛いほどに。

 耳元で、小さく呟く。


「…ごめんなさい。」


 抵抗するも、思った以上にきつく足掻いてもびくともしない。

 そのまま、床に押し倒される。

 ラグに両手を押さえつけられ、手首に痛みが走る。

「…くっ。遠山さん?」

 私は遠山さんを仰ぎ、その顔を見る。

「僕は貴女みたいに強くなれない。」

 涙が一滴、私の頬に落ちる。

「苦しいです。辛いです。僕のこの胸の中の箱は、もう胡桃への想いで一杯です。もう、爆発しそうなくらい膨れ上がっています。」

 なんて、可哀想な人なんだろう。

 素直になれば、楽になれるのに。
 貴方の答えは出ているのだから。

「…僕のこの箱から全てが飛び出したら、後には何が残っているんでしょうね?」

 私を押さえつける手が緩む。
 そっと手を伸ばし、遠山さんの頬を伝う涙を拭う。

「それは、きっと胡桃ちゃんが教えてくれますよ。」

 素直になりませんか?
 欲しいものは欲しい。
 求めても遠ざかるなら、手に入れるまで追いかけて。

 この人の勇気の糧になれるなら、今は優しく抱きしめてあげよう。

 そっと、首に腕を回し身体を引き寄せる。力の抜けた身体は温かく、柔らかく。その、髪に首に唇を寄せる。

 昔の私に決別するように、強く、強く抱きしめる。

 





「お兄ちゃん?」

 夏と胡桃ちゃんが、コンビニから帰宅する。
 アイスやらケーキ、スナック菓子を大量に買い物をして。

 胡桃ちゃんが玄関で靴を脱いでいると、遠山さんは近寄り静かに抱きしめる。

「お帰り。」


 夏はニヤニヤ二人を見ながら、私の側に座る。

「…橙子さん。」

「な、何?」

 夏からカップのオレンジシャーベットを受けとり、蓋を取る。プラスチックの小さなスプーンで硬い表面を削り食べる。

「…アイス食べたら、帰りませんか?」

「う、うん。」

「あんなに当て付けられたら…俺、我慢できませんよ。」

 何のですか?

 玄関では長い抱擁。

 会話は聞き取れなかったけど、きっと願いが叶ったのかな。胡桃ちゃんの泣き声と、遠山さんのなだめる声が聞こえる。

「ねぇ、夏。」

「はい?」

「私の事、好き?」

「好きですよ。橙子さんも俺の事、好き?」

 夏の耳元に囁く。

「…大好き。」
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