この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
ここで待ってるから。
第19章 サクラサク。③
〈沙矢子の領分〉


「こっちは、桜がすごい。満開。」

 夜、帰宅中に携帯が鳴る。
 見ると、総一朗君だった。立ち止まり、道の端に寄り携帯に出る。

 先週から獣医師のセミナーがあるといって、北海道に泊まりで行っている。
 
 二週間がっつり研修だから、まだあと一週間も会えない。

 家に帰れば、お祖父ちゃん先生と小雪さん。ブルドックの小百合に、拾った猫のツキが出迎えてくれる。

 それでも、総一朗君のいない夜は寂しい。

『北海道はまだまだですね。寒いですし。あ、そうだ。研修が終わったら、知り合いの牧場に行く事になりました。』

 ん?それは、更にこっちに帰ってくるのが遅くなるって事?

「そうなんだ…。仕事なら仕方ないよね。」

『沙矢子さん…寂しいですか?』

 寂しいに決まってる。

 でも、それを言ったら大人げないし。
 お互いこんな状況わかった上で付き合ってる…つもりだし。

「みんないるから大丈夫。」

『…そうですか。今年、そっちで花見は出来なかったけど来年はしましょうね。』

 来年は…。

 私と貴方が続いてたら…ね。

 心の中がやさぐれる。素直じゃないのは、面倒くさがりで天の邪鬼。
 単純な恋愛を複雑にしてしまう。

 ここで、可愛らしく寂しいわ、とか会いたくてしかたない、とか口が避けても言わない。

 
 帰ると小雪さんが夕飯を用意して待っていてくれた。

「お帰り。沙矢子ちゃん。一緒に食べようと思って待ってたの。」

「ただいま。うれしい。お腹ペコペコです。」

 ダイニングテーブルには、揚げたてのメンチと山盛りサラダが並んでいる。

「とりあえず、着替えてきて。話したいことがあるから。」

 話したいこと?
 なんだろう。

 部屋に戻り、スーツを脱ぐ。簡単な服を着て、束ねていた髪をほどく。一息つくと、足元にツキがまとわりつく。
 半年前に夜中に拾った猫。
 この猫のツキが縁で、総一朗君と知り合い同棲するようになった。

 でも、私は普通の会社員。
 総一朗君は獣医師。

 仕事に接点もなく、一緒にいられる時間も少なくすれ違う事が多い。

 そんな状態、続くのかな。

 大きな溜め息をつく。

 側にいてほしい。
 こんなに、胸が痛い。
 不安に、寂しさに押し潰されてしまいそう。

 今は、総一朗君にただ抱きしめてほしい。
/205ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ