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ここで待ってるから。
第19章 サクラサク。③
 今、自分が変な顔をしているのがわかる。

 なんで、総一朗君がいるの?

「…田畑さん、また近々会うだろうから。…橙子によろしく伝えて。」

 あれ?なんか前よりは丸くなったのかな。
 少しだけ、寂しそうな顔。

 石黒はそれでも、総一朗君に視線を投げて踵を返す。

 あまり、目立った騒動にはならず静かに席に着く。

「…えっと…。総一朗君。どうしてここにいるの?北海道じゃないの?」

 総一朗はしれっと向かいの席に座る。

「てか、小雪さんは?」

「デートだと思いますよ?」

「うん?だって、今日、私とここに…。」

 総一朗君はクスッと笑う。

「前から小雪ちゃんに頼んでおいたんです。セミナーが決まってから、沙矢子さんの誕生日と被ってしまうなと思って。セミナー主催者は僕の親友だから無理矢理、土日は休みにさせて一旦帰ってきたんです。」

 そうだったんだ…。
 
「また、明日にはあっちに帰りますが。」

 そっと、私の頬に手を添える。
 
「…今夜はずっと、一緒にいてください。」

 そのまま、指先で唇をなぞる。

 会いたかった人がいる。
 触れてほしかった人がいる。

 目を閉じて、声を聞く。

 時々、風に揺られた桜の花はサラサラと音をたて花びらを降らせる。
 まるで、二人の再開を祝福するように。



「で、さっきの男は誰ですか?」

 前菜、スープと続き魚料理が出てくる。
 あっさりとした白身魚に、バターの濃厚なソースがかかっている。シトラスの香りが爽やかにかおる。

「う、うーん。」

 私の口から言っていいのか、わからないけど何となくぼやかして話す。

「同じ会社の同期。橙子の元カレなんだけど…。色々あって、ニューヨークの海外事業部に三年前異動になったの。」

「沙矢子さんの元カレじゃなくて良かったです。」

「なんで?」

「元カレだったら、きっと殴りつけてますよ。」

 元カレじゃなくても、そんな雰囲気だったけど。
 …そっか、日本に帰って来たって事は本社で嫌でも会うことになるよね。先に、橙子に話しておかないと。

 だいたい、あんな酷い別れ方をしてまた、連絡とりたいとかありえない。
 てか、真理子さんはどうしたのよ。
 あの、諸悪の根元は。

 ツン、とおでこをつつかれ我に帰る。

「沙矢子さん?駄目ですよ。僕以外の男の事考えたら。」
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