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ここで待ってるから。
第21章 サクラサク。⑤
 結局、泣きながら寝たものだから朝起きると、瞼は腫れ上がり顔も浮腫んでいる。

 とりあえず、応急措置として氷を当てて様子を見る。

 里桜は何処かに出掛けたようで、部屋はひっそりとしている。
 テーブルには、里桜が朝食を用意してくれていた。

 昨夜は何も食べていたかったので、しっかりといただく。

 いつだって、里桜は私を好きでいてくれると思っていた。私だけの、里桜だと思っていたのに。

 あんな言葉、私以外にかけないで欲しい。

 私だけの里桜でいて欲しい。

 里桜のすべてか欲しい。




「かの子さん。お久しぶりですね。」

 閑静な住宅街の一画、小さいながらも手の行き届いた庭のある純和風の住居。

 玄関で佐々先生の歓迎を受る。

 足元に先客の靴が脱いである。上品な革の靴だが、かなり履き込んでいる。

「かの子さんが来ると言ったら、是非とも会いたいと言う奴がいましてね。さあ、どうぞ。」

 佐々先生に促され、部屋に入る。

 襖を開けると、座卓の前に正座をしている一人の男性がいた。
 机の上には、沢山の書物とデジカメ、ノートが広がっている。

「かの子さん、そちらの席に。ほら、ほら。朝陽君。水瀬出版の社長さんが来たよ。」

 佐々先生はその男性に声をかける。

 すっ、と顔を上げる。

 眼鏡を指で押し上げ、煩い前髪を払う。

「あぁ、はじめまして。これは、これは。佐々先生も隅におけませんね。」

 どこかで、見た顔だけど…。朝陽君…。えっ?

「え、あ、も、もしかして、冷泉院朝陽?!…先生?」

「御名答。」

 今、テレビや雑誌の特集で引っ張りだこの超有名作家。彼の発言力は強く、特に女性からの支持は熱い。

「今、私の故郷の郷土資料館から寄稿の依頼が来てまして。その土地の伝説や怪談を調べているんです。こう言う話なら、やはり佐々先生抜きでは語れない。まぁ、それが三割。貴女に会いたかったのが、七割ですが。」

 涼しげに笑う顔は爽やかで、優しい。

 里桜とはまた違った魅力を感じる。

「水瀬出版の先代とは何回かお会いした事がありますよ。その度に、娘さん…貴女の話をなさっていましたよ。」

「父が?私の?」

「はい。」

「二人とも、お茶を淹れたのでこちらにおいで。」

 佐々先生が隣の部屋から声をかける。

 朝陽先生はノートを閉じ、立ち上がる。
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