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ここで待ってるから。
第22章 あの頃の君へ。②
「久しぶりじゃないか。橙子…。」

 週明け早々、色々とダメージを受けて精神的に落ち込む。

 総務室から出ると、ばったり涼介と鉢合わせになる。

「う、うん。」

「…元気ないな。どうした?」

「涼介は元気そうね。」

「まぁ、な。…久しぶりに、飲みに行かないか?」

 涼介の誘いに気が紛れれば、それでいいかと了承する。

「…いいけど。」

「愚痴くらい聞くぞ?それとも、欲求不満か?」

 持っていたファイルで背中を叩く。

「ば…っ。バカじゃないの?ありえない。」

「ははっ。それは、置いといて。仕事が終わったらメールする。…メアド、削除してないよな?」

「…うん。」

 今まで、ちょっと避けてたけど自然に話せたな。嫌いになって別れた訳じゃないから、こうやって気にかけてくれるのは嬉しい。




「それって、浮気じゃない?」

 沙矢子に痛いところを突かれる。

「…え。浮気になる?だ、駄目かな?」

「良いか悪いかは、橙子とイトコ君の二人の感覚の問題だからね。イトコ君が元カレとあんたが飲みに行くことを、浮気だって言うなら浮気だし。あ、私は浮気かなっ?て。」

 ロッカーで帰り仕度をしていて、そんな話になる。

 えー、ちょっと飲みに行くだけだし。
 夏はなんだかんだ言って、私には甘いし。うん、大丈夫でしょう。

「…イトコ君は私の事好きだし、優しいし、一番大事にしてくれるし…元カレとちょっと飲みに行くだけなんだから、その位で怒らないよね。…なーんて、甘く考えてたら駄目だからね。」

「そ、そんなもの?じゃあ、一緒に仕事で毎日会ったりしたら、それも浮気になっちゃうよ。」

「話をすり替えない。仕事は仕事。プライベートはプライベート。」

「…じゃあ、沙矢子いっしょに来てよ。」

「え。無理。今日、北海道から総一朗君が帰ってくるから。」

 二人で会社を出て、沙矢子は最後に釘を刺す。

「橙子、あなた流されやすいんだから。気を付けなさいよ。」

 流されやすい。

 それは、否定はしない。

 でも、私も夏が大切だから。



 涼介にメールで指定された店に行く。

「お疲れ様。」

 先についていた涼介はテーブルでタブレットと携帯で何かしていた。

「ああ。お疲れ。」

「仕事?」

「ん。」

 タブレットと携帯を閉じ、鞄に入れる。
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