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ここで待ってるから。
第22章 あの頃の君へ。②
「…まぁ、ニューヨークに異動になったのをきっかけに別れたんだけど。あの女の言葉が、腹立って腹立って…。」
涼介は黙って私の話を聞いていてくれた。
大した恋愛ではない。
どれも、結局は私は逃げている。
面倒臭い。
「…どの男も、橙子がいい女なのは知っている。」
「…そう、そのいい女…って言うのが本気でわからない。だったら、なんで手離すの?逆に、離さないようにしないの?」
「俺は少なくとも、努力はした方だな。」
「え、あ、…うん。」
「側にいるだけで、安らぐ。確かに、そう思う。我が儘を言わない。自分のペースを持っている。相手に頼らず、自分の足で立ち歩く。男からしたら…まるで、同志…みたいな存在かな。」
なんだか、私が女じゃなくて男なんじゃないかと思ってきた。
「…橙子。」
煙草を灰皿に押し付け、火を消す。
「ん?何?」
「今、幸せか?」
前にも誰かに聞かれた。
あの頃の自分。
「…幸せよ。」
辛い思い出も。悲しい思い出も。すべてが今の私の糧になっている。
辛いから、悲しいからと立ち止まっていたあの頃の私に言ってあげたい。
今、私は幸せだから。
悲しまないで。
「ほら、もう橙子の恋愛話しは笑い話になってるじゃないか。」
「…確かに。でも、一つだけ。逃げていた事があるけど…。」
あの、小暮真理子の言葉は本当に石黒が発した言葉なんだろうか?
別れる時に石黒に聞きたかった。
勇気がなかった。
あくまで、身体の関係だったから。泣いてすがるなんて、私には出来ないことだった。
「で、その男が近々、帰ってくるわけか。」
「そう。会いたくないと思ってたけど、涼介に話をしたら気持ちが楽になった。ありがとう、涼介。」
そう、あの頃の自分を受け入れよう。
今があるのは、あの頃の自分がいたから。
「いや。さて、そろそろ帰るか。橙子の大事ないとこが待ってるからな。」
「うん。あ、涼介。そう言えば、専務のお嬢さんとお見合いしたの?」
「したよ。」
「…どうだった?」
「それは、また今度。ほら、携帯鳴ってるぞ。」
携帯を鞄から出すと、夏からの着信。
ふっ、と涼介と目が合う。
そこには、優しく微笑む涼介がいた。
ああ、こんな表情もするんだ…。少しだけ、嬉しく思う。
涼介は黙って私の話を聞いていてくれた。
大した恋愛ではない。
どれも、結局は私は逃げている。
面倒臭い。
「…どの男も、橙子がいい女なのは知っている。」
「…そう、そのいい女…って言うのが本気でわからない。だったら、なんで手離すの?逆に、離さないようにしないの?」
「俺は少なくとも、努力はした方だな。」
「え、あ、…うん。」
「側にいるだけで、安らぐ。確かに、そう思う。我が儘を言わない。自分のペースを持っている。相手に頼らず、自分の足で立ち歩く。男からしたら…まるで、同志…みたいな存在かな。」
なんだか、私が女じゃなくて男なんじゃないかと思ってきた。
「…橙子。」
煙草を灰皿に押し付け、火を消す。
「ん?何?」
「今、幸せか?」
前にも誰かに聞かれた。
あの頃の自分。
「…幸せよ。」
辛い思い出も。悲しい思い出も。すべてが今の私の糧になっている。
辛いから、悲しいからと立ち止まっていたあの頃の私に言ってあげたい。
今、私は幸せだから。
悲しまないで。
「ほら、もう橙子の恋愛話しは笑い話になってるじゃないか。」
「…確かに。でも、一つだけ。逃げていた事があるけど…。」
あの、小暮真理子の言葉は本当に石黒が発した言葉なんだろうか?
別れる時に石黒に聞きたかった。
勇気がなかった。
あくまで、身体の関係だったから。泣いてすがるなんて、私には出来ないことだった。
「で、その男が近々、帰ってくるわけか。」
「そう。会いたくないと思ってたけど、涼介に話をしたら気持ちが楽になった。ありがとう、涼介。」
そう、あの頃の自分を受け入れよう。
今があるのは、あの頃の自分がいたから。
「いや。さて、そろそろ帰るか。橙子の大事ないとこが待ってるからな。」
「うん。あ、涼介。そう言えば、専務のお嬢さんとお見合いしたの?」
「したよ。」
「…どうだった?」
「それは、また今度。ほら、携帯鳴ってるぞ。」
携帯を鞄から出すと、夏からの着信。
ふっ、と涼介と目が合う。
そこには、優しく微笑む涼介がいた。
ああ、こんな表情もするんだ…。少しだけ、嬉しく思う。