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ここで待ってるから。
第24章 そうだ、温泉に行こう。プロローグ。
 旅行の当日、総一朗君が車を出してくれて四人で行くことになった。

「はじめまして。東夏です。今日はよろしくお願いします。」

「うん。よろしく。沙矢子さんから、色々聞いてるよ。」

 沙矢子の方を見ると、ニヤニヤしている。何を吹き込んでるんだか。

 しばらく、車を走らせ都会の風景から緑や山の景色に変わって行く。新緑の香りを運び、爽やかな風が車内に入り込む。

 夏と私は後部座席に座り、ガイドブックを広げ観に行きたい場所や食べたい物を探す。
 しばらくすると、それも飽きてきたのか夏が肩に頭を乗せてくる。小さくあくびをして、申し訳なさそうに総一朗君に話しかける。

「倉城さん、すみません。昨日まで、徹夜で仕事してたので眠気が…。」

「大丈夫だよ、寝ていて。」

 そのまま、身体を小さくして私の膝に頭を預ける。温かい体温にまるで、小動物みたいだと思った。

 髪を撫でると、鼻をスンと鳴らし深く息をする。

 こうやっていると、まだ子供みたい。

 こんな時間、この先も夏と過ごせるのかしら。ずっと一緒にいてほしいと、私の我が儘を夏に押し付けてしまっていいのかな。

 夏は構わないと言うだろう。

 夏はそれで、幸せと笑ってくれるだろう。

 何度も、何度も繰り返す私の悩みにいつは呆れるかもしれない。

 その時、私はちゃんと答えを出せるだろうか。





「橙子さん。橙子さん。着いたよ?」

 はっと、目を覚まし回りを見渡す。

 夏の肩に頭を乗せて、寝てしまっていた。いつの間にか夏と入れ替わっていた。

「ちょっと涎、垂れてるから。よく寝ていたわよ。イビキがうるさいこと。一緒に寝てる、夏君に感心するわ。」

 助手席から沙矢子が覗きこみ、クスクス笑っている。

「う、うるさいな。」

「橙子さんのイビキなんて、ぜんぜん可愛いですよ。」

「あら、そうなんだ。」

「な、何よ。その、以外だわ~みたいな反応は。私は寝相も良いよね?夏。」

「…ぷっ。た、確かに寝相は良いんですが…。」

 夏は苦笑いしながら、軽く咳払いをする。

「寝言がひどいです。」

「えー、どんな感じ?」

「もう、卑猥な言葉連発ですよ。こんな、シラフじゃ言えないです。もう、エロ過ぎてヤバイです。」

 沙矢子が大笑いする。

「じゃあ、後で詳細を教えてね。今夜は飲むからねー。」
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