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ここで待ってるから。
第24章 そうだ、温泉に行こう。プロローグ。
 駐車場に車を止め、旅館の受付を目指す。

 直ぐに、中から一人の着物を着た女性がやって来る。その後ろには二人の中居さんも控えている。

「皆様、ようこそお越しくださいました。私、しんざん亭の女将をさせていただいております。さぁ、受付けはこちらです。」

 三人は深々と頭を下げる。

 二人の中居さんは私と沙矢子の荷物を受けとり、後を着いてくる。

 女将は受け付けにいた男性に声をかけ、用紙とペンを用意させる。

「こちらに、御名前、連絡先のご記入を。あと、こちらの宿泊チケットをいただけますか?女性の方、お二方にはこちらへどうぞ。」

 総一朗君と夏が用紙に記入している間、女将に呼ばれエントランス脇にある囲炉裏に案内される。

「女性の方には、こちらの浴衣を。選んでいただいたら、後程お部屋の方にお持ちしますね。」

 見ると、色鮮やかな浴衣と帯が並んでいる。

「うわ。素敵な浴衣。橙子はどれにする?」
 
「うーん。悩むなぁ。」

 藍色に芙蓉も白地に紫陽花柄も素敵。

 二人とも、ああだこうだとなかなか決まらない。

「もし、迷われているようなら私が選びましょうか?」

 女将が優しく笑い、声をかけてくれた。

「そうですね。じゃあ、お願いします。先に沙矢子、選んでもらって。」

「…そうですね、お客様は背が高くていらっしゃるから…。」

 二人で選んでいる姿を見て、女将の横顔に何故か親近感を沸く。

 あら?何処かで会ったことが会ったかしら?

 まぁ、テレビや雑誌で紹介されてるからそこで見たことがあったのかな。

 この、旅館は本当に手入れが行き届いて、人気があるのも納得。大きな花瓶に生けられた花は、美しく生き生きとしている。

「橙子、見て。これにしたわ。」

 沙矢子は半身に浴衣をあてる。
 水色の裾にかけて濃くなるグラデーションに、藤の花が描かれている。帯は濃紺を選び、背の高い沙矢子にとても映える。

「…お客様はどのお色がお好きですか?」

 女将は私に微笑む。

「うーん。好きな色…。」

「橙子の名前の橙色は?」

「まぁ、橙子様ですか。それでは、こちらなんてどうですか?」

 白地に濃い朱色やオレンジの花が散らしている、爽やかな浴衣を選んでくれた。

「素敵です。これにします。」

 帯は山吹色を用意する。

「では、後程お部屋にお持ちします。」
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