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ここで待ってるから。
第25章 そうだ、温泉に行こう。〈花海棠と鳳仙花〉
 一人でゆっくりしたい人もいるよね。

 相手は湯気でハッキリは見えないが、背を向けこちらには気がついていない。

 あまり、音を立てないように来た方向に帰る。しかし、相手は気配を感じたのかスッ、と立ち上がる。

「…あっ。」

「…ん?」

 その人を見た瞬間、身体が凍りつく。

 お湯に浸かっているのに、手足が冷えて背中に寒気が走る。

 な、なんで貴方がいるんですかぁ?

 声に出したいけど、息をするのがやっとの状態。

 あ、目眩が。

「…橙子?」

 本当に立ちくらみで、膝から力が抜け倒れそうになる。

 それを、その人は手を差し出し私を支える。

「…うっ、な、何で…?」

 腕の中に凭れ、恐る恐る顔を上げる。

 そこに、見慣れた顔があった。

「…涼介?」

 その腕も、顔も、眼差しも、まだ覚えている。肌の感触も息遣いも、そんなに遠くになっていなかった。

 手を伸ばせば、そこにいる。

「…そうか。ここに着いた時、帳簿を覗いたら東姓があったのは、橙子のいとこか。」

 耳元の涼介の囁きに、頬を赤く染める。

 今の状態も酷いものだけど、涼介の声が心を震わせる。

「えっ…と。何で、涼介がここにいるの?何か、テレビのどっきり?」

 笑いながら言ってるつもりが、顔がひきっているのがわかる。
 軽く頭の中がパニック。

「…この旅館は、俺の母親が経営している。…まぁ、ここの女将が、俺の母だ。」

「…はぁ。」

 はじめて会ったとき、どこかで会ったことがあったと思ったのは涼介に面影があったからだ。

 今、思えば鼻のラインや目元に…。

「今、何時だ?」

「えっ。えっと、お風呂の男女入れ換え時間だったから…二十二時過ぎ。」

「入れ換え時間だったのか。そうか、どうやら寝ていたみたいだな。」

 涼介は笑いながら、私を抱き抱える。

 うっわぁ、ちょっと私全裸なんですけど。

「…久々に橙子の身体を見たな。」

「ち、ちょっと。は、離してよ。」

 涼介は嫌がる私を見て、ニヤニヤしている。腕を払おうともがく。
 
 それでも、逃げられない。

「せ、専務のお嬢さんと婚約したんでしょ?ちょっとは慎みなさいよ。」

 相変わらずの女癖に辟易する。

「そうだな。だが、誘ったのは橙子だろう?」

「はぁ?誰が?誘ってないし?どんだけ、発情してるわけ?」
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