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ここで待ってるから。
第25章 そうだ、温泉に行こう。〈花海棠と鳳仙花〉
 涼介は私の背中に唇を寄せ、きつく吸い付く。

 キスマーク、つけてる…。ないわ…。

 それでも、逃げられない。涼介の指の動き、タッチを知りすぎている。

 優しく、荒く甘い、甘い、快楽の沼。

 一歩、踏み出せばその沼に足をとられ抜け出せない。

「…結婚した所で、この性格は治らない。それは、橙子もわかってるだろう?今までだって、橙子と付き合っていながら、あちこちにセフレはいた。…どんなに愛情を求めても、足りないんだ。」

 涼介の胸が私の背中に押し付けられる。涼介の吐息が首筋をなでる。

「愛が欲しかった。橙子がいつも俺から愛を欲しがっていたのに。それ以上に、自分も愛が欲しかった。」

「だからって、あちこちに女を作って寝てたなんて、あんまりじゃない?涼介の愛って、何なの?セックスが愛なんて言うならあんた、バカなんじゃないの?わからないなら、わかるまで考えなさいよ。」

 本当に、自分勝手で我が儘で…。

「愛が欲しい?足りない?そうじゃないわよ。貴方が性の捌け口にしていた女達は、ちゃんと貴方に愛情を惜しみ無く与えていたはずよ。少なくとも、私は涼介をちゃんと愛してた…。」

 ふっ、と涼介の腕の力が抜ける。

「涼介はちゃんと、愛を与えていた?涼介と身体を重ねた人達にちゃんと愛情を与えていた?愛情って素直だから、与えた分ちゃんと返ってくるのよ。」

 身体が楽になり、涼介の方に振り向こうとした。

「…ありがとう。」

 涼介は耳元で囁く。

 聞き慣れた、低い声。

「愛してくれて、ありがとう。それで、十分だ。今度は…今度は俺が愛情を与えてもいいんだな?」

「当たり前でしょう。愛されたいなら、愛しなさいよ。」

 もっと前にこんな話をしていたら、私は涼介と一緒にいたかもしれない。

 涼介は弱味を見せないから。

 でも、きっと大丈夫。

「…やっぱり、橙子はいい女だな。」

 涼介の手が私の胸に伸び、優しく乳房を揉みだす。指が乳首を掠め、ころがす。

「ち、ちょっと…涼介…。」

 言ってることと、行動が伴ってないじゃないの。

 あ、もっ…もう、駄目。


「橙子?いるのー??」
 

 神の助け。遠くから沙矢子の声がする。

「…残念だな。橙子。」

 涼介は私の身体を離し、唇を頬に寄せる。

「続きはまた、今度。」

「…馬鹿じゃないの?」
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