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ここで待ってるから。
第25章 そうだ、温泉に行こう。〈花海棠と鳳仙花〉
「橙子、おーい。」

 沙矢子が不審がって、こちらに来る気配がした。

 いや、まずいでしょ。これは。

「沙矢子?こっちに、具合悪くなった人がいるから、誰かフロントから呼んできてくれる?!」

「わかった!!ちょっと、待っててね!」

 自分でも、よくスラスラ嘘が付けたもんよね。感心するわ。

「…東君によろしく。」

 涼介はクスクス笑いながら隙を見て、温泉を横切り脱衣場に向かう。

 なんだか、温泉に来てるのに疲れがどっと出た。まったく…。

 いつも、自分も迷いながら生きてるって言うのにね。他人の事ばかりで、私の迷いは誰が教えてくれるのかな。誰が、指し示してくれるのかな。

 あ、あれ?

 涙が止まらない。

 悲しいというより、愛しくて、愛しくて。

 こんなに誰かを愛していた、自分が愛しい。

 涼介を本気で愛していた自分がいじらしくて。もっと、自分を甘やかしてあげよう。

 顔をお湯につけて、涙を溶かす。

 そのまま、目をつぶり今を思う。

 夏をもっと愛したい。そうすれば、夏も私をもっと、もっと愛してくれるかな。







「ちょっと!橙子!橙子!!」

 ペチペチ。

 頬に痛みが走る。い、痛いからやめてよ。

 ペチペチ。

 ペチペチ。

「い、痛いって言ってるでしょう?!」

 ガバッと身体を起こす。

 目の前に心配そうに、沙矢子と総一朗君と夏が覗き込んでいた。

「うっ、はい?」

「馬鹿!橙子。誰か倒れてるって言うから女将と中居さん呼んで来てみたらあんたが、倒れてたんだからねっ!!」

 良く見ると、女将とフロントで会った背の高い女性と中居さんがいた。

 ふらつく身体を夏が支えてくれる。

「よかった。」

 夏は私の頭を撫でて、ぎゅっと抱きしめる。

「総一朗君が診てくれてたから大丈夫だけど、部屋でゆっくり休んでね。」

 沙矢子も安心したようで、少し微笑む。

「…うん、ご免なさい。あ、女将さん、みなさんご迷惑おかけしました。」

「いえ、とりあえずお部屋でお休みくださいね。何かありましたら、すぐフロントに。」

 女将さんをじっとみつめる。

 なんて、穏やかな人なんだろう。

 そして、何故この騒ぎの張本人がいないわけ?

「女将、今フロントからで真昼さんが着いたみたいです。」

 背の高い女性は女将に声をかける。
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