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ここで待ってるから。
第25章 そうだ、温泉に行こう。〈花海棠と鳳仙花〉
「…はい。」

「…まったく。夏も涼介の挑発に乗らないで。からかってるだけなんだから。」

 夏の頬に手を添える。

 温かい。

「でも、涼介と話せて良かったと思ってる。涼介も多分、何か変わったような気がする。もし、このままちゃんと決別してなかったら、何度も同じ悩みに苦しめられてたかも。」

「答えはあった?」

「うん。ちゃんとみつけた。夏には沢山、愛をあげるから。」

 だから。

「だから、夏は何も言わずに受け取ってくれる?」

 私が夏にあげたいの。

 沢山の想いを。沢山の愛を。

 どうしてかわかる?

 夏が私に沢山、愛をくれたから。

「…ありがとうございます。橙子さん。」

 夏は私の額に唇を落とす。
 温かい、優しいキス。

 こうやって、迷いながら、さ迷いながら二人で見つけて行こうね。

 二人の未来を。



「ちょっと、橙子。反省してないでしょう?」

 朝食をいただき、出発前にお土産を買い込みに温泉街をブラブラ歩く。

 何気に入った、酒屋で地酒を試飲中。

 帰りに運転する気もなく、あれもこれもと薦められるがままに試飲しまくる。

「昨日の事件は酒のせいじゃないわよ。酒に悪気はないんだから。あ、この辛口おいしい。沙矢子はどれにする?」

 呆れながらも、一緒に試飲しまくる。

「橙子に同じ。この酒に決めた。」

 会計を済ませ、一度旅館に戻る。

 フロントを通りすぎると、女将が一人の女性と話ながら花瓶の花をいじっている。

 私達に気がつき、声をかけてくる。

「お帰りなさいませ。どうでした?気に入ったお土産はありましたか?」

「あ、はい。地酒を少々。」

 私は包まれた一升瓶を見せる。

「そこの、お酒は良いですよ。体調はどうですか?」

「もう、大丈夫です。本当にお世話になりました。」

 軽く頭を下げる。

「…うちの息子がご迷惑をおかけしました。」

 え。あ、涼介話したのね。

「あれは、昔から父親を嫌っていました。今でも頑なに拒否して、自分の事も押さえ込んでしまいあまり、感情を出す事はなかったのですが…。貴女の出会いから今までの事を話している姿は、とても楽しそうにしていました。きっと、貴女から色々感じることがあったんでしょう。」

 私は涼介を少しだけ想う。

「…本当に男って。」

 単純な生き物ね。…私なりに想う。
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