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ここで待ってるから。
第26章 そうだ、温泉に行こう。〈山茶花〉
 今更、何の確認をしたいのだろうか。

 橙子の気持ちか?

 自分の気持ちか?

 それを手に掴んだのに、スルスルと抜け出してしまう。自分を嘲笑うかのように。自分を欺くように。

 本当の自分はいったいどうしたいのだろうか。


 夜の風は冷たくて、優しく火照った身体を撫でる。

 暫くすると、人が一人、露天風呂に入ってきた。そっと覗くと、後ろ姿で橙子だとわかった。

 何度も抱いたその身体。

 忘れもしない。

 かなり、驚いていたが抱きしめずにはいられない。

 その背中に唇を落とす。あの、いとこへの小さな嫌がらせか、嫉妬心かきつめに吸い付きキスマークを付ける。

 橙子の身体が反応するのがわかる。

 誰にでも欲情するアバズレとは思わない。ただ、身体が素直なだけ。誰にでも柔軟に反応する。



「愛が欲しかった。橙子がいつも俺から愛を欲しがっていたのに。それ以上に、自分も愛が欲しかった。」



 なんて、寂しい自分だろうか。

 蓋を開ければこんな、中身のないすかすかな自分。

 橙子は十分すぎるほど、自分に愛情を与えてくれていた。それは、知っていた。知っていたのに、駄々をこねる子供のように、もっともっと欲しがった。

 欲しがったくせに、その愛情を返す術を知らなさすぎた。

 女は、上っ面の言葉で身体を開き、抱いてやれば愛を簡単にくれる生き物だと思っていた。

 馬鹿な。今更。

 父が愛人を作り、家に帰らない時も綺麗に化粧をして温かい食事を作り、いつまでも帰りを待っていた母親。

 昔はそれを、おかしいと思っていた。

 愛情がなくなったなら、別れてしまえばいいのに。

 そうじゃなかった。

 答えてくれようが、くれまいが女は愛情を与える生き物。

 それに返すことが出来るのが、男。



「涼介はちゃんと、愛を与えていた?涼介と身体を重ねた人達にちゃんと愛情を与えていた?愛情って素直だから、与えた分ちゃんと返ってくるのよ。」



 そうだな、橙子。

 今からでも、間に合うだろうか。

 母に、この先共に生きていくという女に。ちゃんと、愛を返せるだろうか。

 心から、愛する女なら。きっと。


「ありがとう。」

 いつか、思い出になるになるまで。

 それは、静かに、絶え間なく流れる時間が解決してくれるだろう。

〈温泉シリーズおしまい〉
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