この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ここで待ってるから。
第27章 螺旋の迷路。
「石黒さん、お帰りなさい。相席よろしいですか?」
「あちらの生活はどうでしたか?色々、お聞きしたいのですが…。」
「歓迎会するので、ご都合のよろしい日など…。」
こんな会話がランチ時の食堂に響き渡る。
一人の男に群がる女子達。
「うわぁ…。最悪。外に食べに行けば良かったね。」
沙矢子は面白くなさそうに、カレーピラフをつつく。私は、サラダにドレッシングをかけ食べはじめる。
「まぁ、予想はついてたから。」
石黒克也。35歳。独身ときたら女子達は群がるわよね。海外転勤から本社に戻され、また営業に戻るらしい。
本社勤めとなれば、機会は少ないけど会うこともあるでしょう。
「…何で橙子はそんなに冷静な態度なの?」
確かにあの時の恋愛は苦しくて、悲しいだけだった。
でも、今は違う気がする。
「何でかしらね。」
「…今、ちゃんとした恋愛してるから?」
「うーん?ちゃんと、か分からないけど。そうね。私が愛した分、夏から返ってくるから。」
「お、おー。昼間っから、ご馳走さま。」
そんな、他愛もない会話の中に少しだけよぎる近い未来。
この先の不安定さは、まだ拭えない。
「あ。そうだ、橙子。この前、ばったりホテルで石黒さんに会った話し、したっけ?」
「…聞いてない。」
初耳なんですけど?
「ホテルで総一朗君とディナーに行った時に、向こうは結婚式の披露宴に招待されてたみたいなの。その時、なんだか橙子に会いたがっていたけど。」
「…今更?どうして?」
「さぁ?」
そんな事を言われたら、逆に意識してしまうんですけど。
なるべく、視界に入らないように沙矢子の方に身体を向ける。時々、視線を感じるのは自意識過剰になってるから。
時間を見ようと、携帯を覗くと夏からメールが届いていた。
『今日、橙子さんの会社近くで外回りなんだ。帰り、迎えに行くね。』
小さな出版社に勤める夏は、色々な仕事をこなしてるみたい。編集も、営業も。私も仕事に集中しなくちゃね。
メールの返事をして、さっさと食事をする。
「あら、噂のいとこ君から?」
「…いつ噂したかしら?」
食事が終わり、食器を片付けようと席を立つと談笑していた石黒も立つ。
意識しないようにしていたが、長身の彼は立ち上がるだけで視界に入る。
「波村さん。」
「あちらの生活はどうでしたか?色々、お聞きしたいのですが…。」
「歓迎会するので、ご都合のよろしい日など…。」
こんな会話がランチ時の食堂に響き渡る。
一人の男に群がる女子達。
「うわぁ…。最悪。外に食べに行けば良かったね。」
沙矢子は面白くなさそうに、カレーピラフをつつく。私は、サラダにドレッシングをかけ食べはじめる。
「まぁ、予想はついてたから。」
石黒克也。35歳。独身ときたら女子達は群がるわよね。海外転勤から本社に戻され、また営業に戻るらしい。
本社勤めとなれば、機会は少ないけど会うこともあるでしょう。
「…何で橙子はそんなに冷静な態度なの?」
確かにあの時の恋愛は苦しくて、悲しいだけだった。
でも、今は違う気がする。
「何でかしらね。」
「…今、ちゃんとした恋愛してるから?」
「うーん?ちゃんと、か分からないけど。そうね。私が愛した分、夏から返ってくるから。」
「お、おー。昼間っから、ご馳走さま。」
そんな、他愛もない会話の中に少しだけよぎる近い未来。
この先の不安定さは、まだ拭えない。
「あ。そうだ、橙子。この前、ばったりホテルで石黒さんに会った話し、したっけ?」
「…聞いてない。」
初耳なんですけど?
「ホテルで総一朗君とディナーに行った時に、向こうは結婚式の披露宴に招待されてたみたいなの。その時、なんだか橙子に会いたがっていたけど。」
「…今更?どうして?」
「さぁ?」
そんな事を言われたら、逆に意識してしまうんですけど。
なるべく、視界に入らないように沙矢子の方に身体を向ける。時々、視線を感じるのは自意識過剰になってるから。
時間を見ようと、携帯を覗くと夏からメールが届いていた。
『今日、橙子さんの会社近くで外回りなんだ。帰り、迎えに行くね。』
小さな出版社に勤める夏は、色々な仕事をこなしてるみたい。編集も、営業も。私も仕事に集中しなくちゃね。
メールの返事をして、さっさと食事をする。
「あら、噂のいとこ君から?」
「…いつ噂したかしら?」
食事が終わり、食器を片付けようと席を立つと談笑していた石黒も立つ。
意識しないようにしていたが、長身の彼は立ち上がるだけで視界に入る。
「波村さん。」