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ここで待ってるから。
第4章 本当の気持ち。
「あ、総一郎君?沙矢子、潰れて寝ちゃって…うん。いつもの店。うん、よろしくお願いします。」

 沙矢子の彼氏を呼び出す。
 膝の上で軽いいびきをかき、スヤスヤ沙矢子が寝ている。ケータイをいじりながら、スルメを噛み締める。

 三十分ほどで、総一郎が到着する。

「ああ、沙矢子さん。すみません、橙子さん。」

「…ううん。いつもの事だから。よろしくね、総一郎君。」

 総一郎はお代の半分を私に渡し、沙矢子を抱えて店を出る。
 この二人の相思相愛ぶりは本当、羨ましい。
 二人とも、上手にお互いを尊重し付き合っている。

「…はぁ…。」

 涼介と付き合い始めて、二年。
 最初はお互い意識はせず、同じ企画部の違うチームの社員位にしか思っていなかった。
 企画部全体の飲み会の時に、涼介に介抱されてからどんどん距離が縮まった。

『俺と付き合わないか?』

 きっと向こうは軽く言ったんだろうな。
 私は結構、本気で入れ込んでたけど付き合えば付き合うほど相手の欠点が見えてくる。

 ただ、やりたいだけ。

 これが涼介の根本。
 可愛いだの、好きだの、取って付けたセリフは最近やっと増えた。それも、私が最近面倒臭さく、涼介を適当に扱ってから。
 でも、やっぱり可愛いとか好きとか言われれば、うれしい。

 はぁ…本当、面倒臭さい女だ。私って。

「ねぇ、姉ちゃん一人か?おじさんが相手してやるよ?夜の相手も。」

 酔っ払いが絡んできた。
 なんだか、肩を掴まれ強引に店から連れ出されそうになる。店員もかけつけ、酔っ払いと私を離そうとする。

「いいじゃねぇかよ?!どうせ、男とやりまくりなんだろう?!」

 サイテー。

 酔っ払いを蹴り倒そうとした時、フワッと身体が浮く。

「…橙子さん。遅くなってごめん。」

 夏が私を抱き抱え、酔っ払いと対峙する。
 背の高い夏は、相手を見下ろし睨む。いつも温厚な姿しか見たことなかったから、少し驚く。
 酔っ払いは何か捨ゼリフを吐いて、去っていった。


「…沙矢子は先に潰れて帰っちゃった。」

「うん、そっか。…帰ろうか。」

 夏が手を出し、つなぐ。
 温かい大きな手に安堵する。

 私の歩幅に合わせてくれる、この従兄弟に少しだけ未来を重ねて見る。
 二人に優しい静かな時間が過ぎてゆく未来。
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