この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
ここで待ってるから。
第4章 本当の気持ち。
 手をつなぎ、夜道をゆっくり歩く。
 夏の横顔を見る。
 少しだけ、微笑んでいる。

 あれ?昔、こんなことなかった?

「ねえ、夏君。前にこんな事、なかったっけ?」

「俺が七歳、橙子さんは十三歳だったかな…地元の夏祭り、覚えてない?」


 生まれ育った故郷は、山の中のど田舎。自然に囲まれ、沢山の親戚に囲まれて育った。
 私の母と夏の母は五人兄弟で、祖父母、おじおば、他のイトコ達と毎日を過ごした。
 私も夏も一人っ子だったけど、寂しくはなかった。

 地元の夏祭りは盛大で花火も上がり、テキ屋もそれなりに出ていた。

 歳は離れていたけど、姉と弟みたい仲が良く、一緒によく遊んだり、出かけたり。

 あの祭りの時、神社までの暗闇の中、草履の鼻緒が切れて中々直らなくて…私、泣いて動かなくなったんだ。 そうだ。その時だ。

 夏君はまだ七歳なのに、ハンカチで鼻緒を作ってくれて、泣いてる私の手を引いて歩いてくれた。



「…橙子さん。図工は壮絶な位できなかったもんね。で、泣き虫で。小さくて。」

 クスクス笑い、歩みを止める。
 私に向き直り、優しく微笑む。

「…それから、大学に行くのに家を出てしまって。年に一回、正月くらいしか会えなくなった。」

 つないだ手が解け、今度は指が絡む。

「俺はいつも、橙子さんの背中ばかり追っかけていた。」

 長い指が私を絡め取る。
 
「…今は、橙子さんの背も追い越した。やっとここまで、来れるようになった。…でも、橙子さんは他の男のモノになってた。」

 まともに、夏を見れず言葉に詰まる。

「ねえ、知ってた?俺の初恋、橙子さんなんだよ?」

「…嘘。」

「本当。」

 絡む指に力が入る。

「いつだって…今だって、橙子さんの事が…。」

 それ以上、言葉を続けないでほしい。
 今、そんな言葉を聞いたら…。

「橙子さん。」

 夏を見ると、困った顔をして私を抱きしめる。
 本当に背が伸びた。
 私なんか、腕の中にすっぽり収まってしまう。
 
 いつも私の前を歩いてくれていた。

「…今、幸せ?」


 涙が溢れる。


 もし、それに答えてしまったら全てが壊れてしまいそうで怖い。








  

 






 
/205ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ