この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ここで待ってるから。
第28章 ここで待ってるから。①
金曜日の夕方に、会社から直接実家に帰省する。
前は夏が一緒だった。
あの時はまだ、涼介か夏かなどと迷ったりして。それでも、答えはでないまま夏を好きになり、身体を求めあった。
夏の肌の熱さや、感触を思い出す。
いつか、またちゃんと向き合える日は来るのかしら。
私はまだ何も話していないし、言い訳すらも伝えられない。
沙矢子に言わせれば、子供なんだと。
欲しいものが手に入らないと駄々をこね、へそを曲げていじけている。
私も夏と同じだ。
お互い、悲しいくらいの意地っ張り。
「ねぇ、一緒にカブトムシ取りに行こうよ。」
ああ。これは、夢かな。
私と夏が小さかった頃の…。
小さい夏が、自分の背丈を越えた虫とり網と緑の虫かご。青色の水筒に飴の入った巾着袋。
朝、太陽が登る前に寝ている私の部屋に来た、小学三年生の夏。
「…まだ、早いよ。」
ベッドの上で時計を確認する。
早朝、四時半。
「夏、眠いよ…。」
薄掛を頭までかぶり、夏を追い返す。
「えー。夏休みに入ったら、カブトムシとりに行くって約束したよ。ねー、ねー起きてよ。」
あまりにも身体を揺さぶられ、眠気も徐々に覚めていく。
「…守に連れていってもらえばいいのに…。」
ブツブツ文句を言いながら、ベッドから起き上がり身仕度をする。
山にはいるから、中学のジャージを上下に着て顔にうるさい髪を束ねる。
「夏も長袖の方がいいよ?」
「大丈夫。裏山だし。ねぇ、用意した?」
夏に手を引っ張られ、まだ家族が寝入って静かな家を出る。
外はまだ、薄暗く山々に朝靄が静かに厚くかかっている。初夏の空気は湿気を含み、肌に優しくまとわりつく。
「裏山の神社に行こうよ。あそこのちょっと先に大きなくぬぎの木を見つけたんだ。まだ、誰も知らないから、きっとカブトムシもクワガタも一杯いるよ。」
そんなに目を輝かせても、たいして興味の無い私は適当に相槌を打つ。
軽くあくびをしながら、夏を先頭に慣れた裏山の道を登って行く。
前を歩く夏はよく見ると、たいして私と身長が変わらない。いつの間にかにこんなに大きくなったんだろう。
一番、チビだった夏に追い越される。
沢山のいとこ達の中で上下関係が生まれ、背の低い私は少しだけ劣等感を持っていた。
前は夏が一緒だった。
あの時はまだ、涼介か夏かなどと迷ったりして。それでも、答えはでないまま夏を好きになり、身体を求めあった。
夏の肌の熱さや、感触を思い出す。
いつか、またちゃんと向き合える日は来るのかしら。
私はまだ何も話していないし、言い訳すらも伝えられない。
沙矢子に言わせれば、子供なんだと。
欲しいものが手に入らないと駄々をこね、へそを曲げていじけている。
私も夏と同じだ。
お互い、悲しいくらいの意地っ張り。
「ねぇ、一緒にカブトムシ取りに行こうよ。」
ああ。これは、夢かな。
私と夏が小さかった頃の…。
小さい夏が、自分の背丈を越えた虫とり網と緑の虫かご。青色の水筒に飴の入った巾着袋。
朝、太陽が登る前に寝ている私の部屋に来た、小学三年生の夏。
「…まだ、早いよ。」
ベッドの上で時計を確認する。
早朝、四時半。
「夏、眠いよ…。」
薄掛を頭までかぶり、夏を追い返す。
「えー。夏休みに入ったら、カブトムシとりに行くって約束したよ。ねー、ねー起きてよ。」
あまりにも身体を揺さぶられ、眠気も徐々に覚めていく。
「…守に連れていってもらえばいいのに…。」
ブツブツ文句を言いながら、ベッドから起き上がり身仕度をする。
山にはいるから、中学のジャージを上下に着て顔にうるさい髪を束ねる。
「夏も長袖の方がいいよ?」
「大丈夫。裏山だし。ねぇ、用意した?」
夏に手を引っ張られ、まだ家族が寝入って静かな家を出る。
外はまだ、薄暗く山々に朝靄が静かに厚くかかっている。初夏の空気は湿気を含み、肌に優しくまとわりつく。
「裏山の神社に行こうよ。あそこのちょっと先に大きなくぬぎの木を見つけたんだ。まだ、誰も知らないから、きっとカブトムシもクワガタも一杯いるよ。」
そんなに目を輝かせても、たいして興味の無い私は適当に相槌を打つ。
軽くあくびをしながら、夏を先頭に慣れた裏山の道を登って行く。
前を歩く夏はよく見ると、たいして私と身長が変わらない。いつの間にかにこんなに大きくなったんだろう。
一番、チビだった夏に追い越される。
沢山のいとこ達の中で上下関係が生まれ、背の低い私は少しだけ劣等感を持っていた。