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ここで待ってるから。
第28章 ここで待ってるから。①
 そんな中、この小学生に背を抜かされるなんて…。

 心の中でやさぐれる。

 二十分ほど歩くと、神社に着く。小さな鳥居にお社。数体のお地蔵さまが並んでいる。

 木々に囲まれた神社は子供達の遊び場になっていた。

 夏は懐中電灯を片手に、どんどん奥に進む。

「夏、奥は駄目だよ。」

 神社の脇にある、木や雑草に茂った獣道に入って行く。

「見つけた木はこっちなんだ。早く、来てよ。」

 みんなからは脇道や獣道には絶対入るなと言われているのに。夏はそんな事もお構いなしに、背高い草を分けて進んで行く。

 仕方なく後ろを着いて行く。

 しばらく進むと小さな広場に出る。

 雑草は低くく、ぽっかりとあいた空間。周りには太い幹の木々が静かに繁っている。

「…こんな所、あったんだ。」

「ほら、すごいでしょう。あっちに、大きなくぬぎの木があったんだ。行こう。」

 懐中電灯を幹に当てると、たっぷりと出ている樹液に沢山の虫たちが群がっている。

 夏は虫網を放り出し、夢中で虫たちを観察する。

 私は少しだけ暑さを感じ、長袖を脱ぐ。近くの切り株に腰掛け、夏の楽しげな様子を眺める。

 朝の気配をだんだんと感じるようになった頃、ふっと顔を上げると夏がいない。

「あ、夏?夏、どこ?」

 一瞬、寝てしまっていたようだ。

「夏?」

 さっきまでいたくぬぎの木には姿がなく、周りを見渡すが気配もない。

 目を凝らすと、雑草を踏んだあとがある。

 山の中に踏みいってしまったようだ。民家が一杯ある裏山にはあまり熊など近寄らないけど、最近は餌の不足でまれに下まで降りてくる。

 そんな、ニュースを思いだし大きな声で夏を探す。

 夏の入っていった道なき道をたどり、少し歩いた先に何かの物音がした。

 熊かと注意深く隠れながら近寄る。

 倒れた木々の間を覗き込むと、五メートル位の窪みがあった。側に虫かごが落ちている。草が穴を覆っていて中が見えない。

「…な、夏?!」

 草を分けて中を覗く。

 まだ、辺りは暗いが下の方に薄らと夏のTシャツが浮き上がる。

「夏、夏!大丈夫?!」

 中から小さな呻き声が聞こえる。

「…と、とう、こ…ちゃん。」

 手を伸ばした所で届くはずもない。横になってあまり動かない夏はどこか痛めてるようだ。

 顔を上げて周りを見渡す。
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