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ここで待ってるから。
第8章 眺めの良い場所。
 守は野菜の山から人参を探して、私にくれた。

「おじさんは、野菜を育てるのが上手だからな。役場の販売所でも一番売れてるし。」

「そっか。ありがとう、守。今夜はみんなくるんでしょう?」

「総勢、親戚一同で約三十人だよ。なかなか、凄い光景だな。あかりのとこも三人目が産まれるし。波村家、東家が爆発的に繁殖してる。」

 私は笑いながら、人参の泥を落とす。

「次は、守がお嫁さんもらわないとね。東本家の跡取りなんだから。」

「ん?…うーん。どうかな。」

 守が少し俯いて、苦笑いする。
 
「東家は俺んかより、妹のあかりや、みおが頑張ればいいよ。婿さん達も良くやってくれてるし。分家とは言え、夏もいるし…。」

「守なら、素敵なお嫁さんが来そうだよね。優しいし、かっこいいし。」

「と、橙子さん!!!」

 何やら遠くから、夏が鼻息荒くかけてくる。
 私の肩を掴み、何故か守に食ってかかる。

「守ちゃん。橙子さんに手出したらダメだからね?!俺が許さないから。橙子さんと付き合ってるのは…。」

 守は目が点状態。私も顔が引きつる。
 ちょ、ちょっと夏君。そ、その…私達の関係は知られたくないんだけど…?!。

「…彼氏がいるのか?橙子。」

「う、うん!!いる、いるよ?!に、二年目の彼氏が!!な、夏、行くよー。」

 夏と人参を抱え、勝手口から台所に戻る。人参を母に放り投げ、首を絞めつつ二階の私の部屋に押し込む。

「…夏、流石に周りには知られたくない。」

 声を潜め、夏を睨む。
 夏は黙って下を向く。

「そうだよね。彼氏がいるのに、従兄弟の年下のガキと深い身体の関係ですなんて、言えないよね?!」

「…夏。」

「恥ずかしいよね。こんなガキじゃ、橙子さんと釣り合わない…。深山さん位、大人じゃないとダメなのかな…。」

 伏せた瞼が揺れている。

「頭ではわかってる。こんなの八つ当たりだって。でも、橙子さんも少しは周りには気をつけてよ。…無防備すぎるんですよ。」

 私は夏の言葉の意味がわからず、戸惑う。夏の手が私の頬を撫でる。

「みんなに、橙子さんは俺の物だって言いたいよ。そしたら、こんなに心配しないのに。」

 私の顔を覗き込み、しかめっ面をする。

「…わかってない。まじで橙子さん、わかってない。」

「…うん。夏が何を言いたいかわからない。」
 
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