この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ここで待ってるから。
第9章 嘘と、好きと嫌い
〈涼介の領分③-3〉
「だいたい、貴方は橙子さんを放っておきすぎなんですよっ。」
確かに大切に思いながらも、放置しすぎてはいたな。
思わず苦笑する。
「な、何が可笑しいんですか?」
「い、いや。君に笑った訳じゃないんだ。自分の愚かさに今気がついたんだ。確かに、口では好きだの愛してるだの簡単に言ってはいたが、まったく心のこもった台詞ではなかったな、と。」
今更、後悔しても遅いな。
橙子が俺かこのイトコか迷っている事態、もう二人にはかなり距離があるんだろう。
なら、俺の答えは決まっている。
「君は。」
改めて、向き直り正面からイトコの姿を捕らえる。この胸の奥にあるのは橙子だけ。なんて、純粋な…。そんな想いに嫉妬する。
「橙子を抱くときは、ちゃんと避妊はしてるのか?」
「…。そんな事、貴方に関係ないでしょう?」
眉をしかめ、睨まれる。しかし、少しだけ頬を赤く染める。
「今日、身体の調子が悪く早退したくらいだ。身に覚えくらいあるだろう?」
今度は目を真ん丸にして、顔色がだんだん青くなる。
いやはや。なんと面白い。
この位の嘘なんて、橙子を失うよりは大したいた事はないだろう。
この青年に負けたと思いたくない。
俺の精一杯の強がり。
こんな子供じみた面も自分にはあったんだな。今までに見たことの無い自分。新しく見つけた、自分。やはり、橙子と出会えた事は素晴らしかった。
「さて、俺は会社に戻る。あとは二人の問題だ。ただし…。」
呆然と立ち尽くす青年の脇を通り、肩に手を乗せる。
「橙子が俺の元に戻るのなら、次は二度と離さない。例えどんな犠牲が出ても、命の限り愛してやるつもりだよ。」
この青年を憎めれば良かった。
怒りをぶつけて、奪い返せばいいのに。
それは出来ない。橙子を傷つけ、泣かすことは出来ない。
「さようなら。イトコ君。」
静かに玄関を出て、車に戻る。
このまま、仕事を続ける気にもなれないな…。
とりあえず、今は誰でもいい。
携帯の中から今すぐに答えてくれる女を探し出す。
大したことはない。
この、感情すら橙子からの贈り物ならば。今は大切に付き合ってみよう。
淋しい…と言う気持ちは、いつか本当に愛する人が消し去ってくれるだろう。
今は淋しさと隣り合わせに歩くだけ。
「だいたい、貴方は橙子さんを放っておきすぎなんですよっ。」
確かに大切に思いながらも、放置しすぎてはいたな。
思わず苦笑する。
「な、何が可笑しいんですか?」
「い、いや。君に笑った訳じゃないんだ。自分の愚かさに今気がついたんだ。確かに、口では好きだの愛してるだの簡単に言ってはいたが、まったく心のこもった台詞ではなかったな、と。」
今更、後悔しても遅いな。
橙子が俺かこのイトコか迷っている事態、もう二人にはかなり距離があるんだろう。
なら、俺の答えは決まっている。
「君は。」
改めて、向き直り正面からイトコの姿を捕らえる。この胸の奥にあるのは橙子だけ。なんて、純粋な…。そんな想いに嫉妬する。
「橙子を抱くときは、ちゃんと避妊はしてるのか?」
「…。そんな事、貴方に関係ないでしょう?」
眉をしかめ、睨まれる。しかし、少しだけ頬を赤く染める。
「今日、身体の調子が悪く早退したくらいだ。身に覚えくらいあるだろう?」
今度は目を真ん丸にして、顔色がだんだん青くなる。
いやはや。なんと面白い。
この位の嘘なんて、橙子を失うよりは大したいた事はないだろう。
この青年に負けたと思いたくない。
俺の精一杯の強がり。
こんな子供じみた面も自分にはあったんだな。今までに見たことの無い自分。新しく見つけた、自分。やはり、橙子と出会えた事は素晴らしかった。
「さて、俺は会社に戻る。あとは二人の問題だ。ただし…。」
呆然と立ち尽くす青年の脇を通り、肩に手を乗せる。
「橙子が俺の元に戻るのなら、次は二度と離さない。例えどんな犠牲が出ても、命の限り愛してやるつもりだよ。」
この青年を憎めれば良かった。
怒りをぶつけて、奪い返せばいいのに。
それは出来ない。橙子を傷つけ、泣かすことは出来ない。
「さようなら。イトコ君。」
静かに玄関を出て、車に戻る。
このまま、仕事を続ける気にもなれないな…。
とりあえず、今は誰でもいい。
携帯の中から今すぐに答えてくれる女を探し出す。
大したことはない。
この、感情すら橙子からの贈り物ならば。今は大切に付き合ってみよう。
淋しい…と言う気持ちは、いつか本当に愛する人が消し去ってくれるだろう。
今は淋しさと隣り合わせに歩くだけ。