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ここで待ってるから。
第10章 女の嫉妬。男の我が儘。

「おはようー。」

 10時過ぎになってから、夏が起きてくる。ボサボサの髪に無精髭。

「おはよう。コーヒー飲む?」

「ん。…橙子さん。」

 寝ぼけているのか、フラフラと私に寄り抱きつく。そのまま、ソファに押し倒され顔が近づく。

「う、ちょ、待って。夏?」

 貴方の後輩、いるんですけど?!
 今は土曜日のゴミ出しに行ってくれてるけど。

「…橙子さん。」

 久々に夏の体温を感じる。髪に顔を埋め、匂いを嗅ぐ。
 やっぱり一人でするより、誰かと…夏じゃないと満たされない。

「く、胡桃ちゃん、帰ってくるから…。」

 軽く肩を押し、顔を反らす。
 本当はこのままキスしたい。身体に触れ、愛したい。
 夏は立ち上がり、目を細める。

 なかなか言葉が出ない。
 小さなため息をつく。

 二人の間に沈黙が流れる。

 ガチャン。
 ドアが開き、胡桃ちゃんが帰って来た。

「ただいま帰りました。あ、東先輩おはようございます。コーヒー淹れますね。」

「うん。手伝うよ。」

 夏と胡桃ちゃんはキッチンに立つ。その後ろ姿を見て、後悔。
 また、夏とすれ違ってしまった…。
 息を吐き、背伸びをする。

 今は胡桃ちゃんがいるから仕方ないけど。あんな風に抱き締めたりするんなら、最後までしてくれたらよかったのに…。


『波村さんですか?遠山です。あと、30分で飛行機出るそうなので、東京着いたらお宅に迎えに行きます。順調なら、20時過ぎにはそちらに…。』

 三時過ぎ、胡桃ちゃんのお兄さんから電話がかかってきた。

「あとで住所、メールで送りますね。」

『ありがとうございます。本当に助かりました。お礼は後程…。あの…。』

「はい?」

『い、いえ。なんでもありません。では。』

「はい。お気をつけて。」

 リビングにいる胡桃ちゃんに声をかける。夏と二人で分厚い本とタブレットをひろげ、にらめっこしている。夏は大学のレポートの手伝いをしているらしい。

「お兄さんから連絡あって、これから飛行機出るそうよ。」

「…お兄ちゃん、何か言ってませんでした?」

「ん?特に。」

「そっかー。いや、私にはメールで橙子さんの事、根掘り葉掘り聞いてくるんですよ。」

「なんで?」

 夏が訝しげに胡桃ちゃんに向き直る。

「多分、興味あるんですよ。橙子さんに。」
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