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ここで待ってるから。
第2章 恋人かセフレか。
 着替えて、髪をセットしてメイクも終了。さっきメールが届き、あと十分ほどでこちらに到着する。バッグとケータイを持ってリビングに行く。

「夏君、昼と夜ごはんは適当に食べてね。」

「うん。」

 ソファにいた夏は立ち上がり、私の側による。
 
「橙子さん。」

 そっと、頬から首筋にかけ指を滑らす。
 ゾクッと肩が揺れ、夏を見る。夏の目が少し冷たく光る。
 顔が近付き、唇が耳元に触れる。
 熱い吐息がまつ毛にかかる。

「な、夏君。近い…。」

「キスしてもいい?」

 私の返事なんか聞かずに、そっとキスをされる。伏せた瞼が揺れる。
 静かに、互いの唇の温かさを感じ合う。
 離れた唇を見ると、薄っすら私の口紅が付いている。

 涼介からケータイにメールが入り、エントランスに車がついたと連絡が来る。

 夏の唇を指で拭う。
 化粧ポーチから口紅を出し、塗り直す。
 

「…夏君、行ってくるから。」

「うん。いってらっしゃい。」

 今のキスはなんだろう。
 いってらっしゃい、のキス?
 別に恋人なわけじゃないのに、普通そんな事する?
 
 恋人かセフレか。

 いや、ただの従兄弟だから。
 それ以上でもそれ以下でもない。
 何かを期待するには、しがらみが多すぎる。


 エントランスに向かうと、車が横付けされている。
 運転席に、涼介がいる。

「涼介、おはよう。…ごめん。遅くなった。」

「大丈夫。行こうか。」

 その時、後ろから呼び止められる。
 夏が小走りに近寄る。

「橙子さん。ケータイ、忘れてるよ。」

 夏が私のケータイを差し出す。
 
「あ、ありがとう。」

 夏が涼介の車を見て、軽く会釈する。
 ハッとし、涼介に向き直る。

「あ、涼介。この子、従兄弟の東夏。今、私の所で居候中。」

 夏が車に近づき、ニッコリ微笑む。

「橙子さん所でお世話になってます。橙子さんの彼氏ですか?今後ともよろしくお願いします。」

「…深山涼介です。よろしく…。」

「…夏君、行ってくるから留守番お願いね。」



 しばらく車を走らせ、高速に乗る。
 相変わらず、無言。
 
「…従兄弟の話、聞いてなかった。」

「あ、うん。」

 涼介をそっと見る。
 眉間にシワがより、口元がきつく結ばれている。

 車は静かに山道を走る。



 





 







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