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ここで待ってるから。
第11章 君が好き。
〈楓の領分〉
この気持ちは箱に閉じ込めよう。小さな、小さな心の箱に。
決して開けてはいけない。
それは、パンドラの箱。
思いがけない出会いで、波村橙子さんと言う女性と知り合うことが出来た。
小柄で髪が長く、綺麗で優しそうな女性。初対面なのにとても安らぐ。
電話での会話も実際に会ってからの会話も楽しく、久々に楽しい時間だった。
胡桃もかなりなついていたな…。
あの出会いから、一週間が経った。
それでも、忘れられないのはあの夜の出来事。
東君の部屋から聞こえた、情事の音。
東君に組み敷かれた、裸体の波村さんを想像する。しなやかな黒髪に色白の肌。熱に浮かされた潤んだ瞳。
声を出すのを我慢していても、時々漏れる喘ぎ声。
かなり刺激的な状況だった。
自分の中に、沸々と沸き上がる欲望に戸惑いながら、平然と日常をこなしていた。
もう会うこともないと、忘れる努力をしていた。
ふと、取引先の花屋で見かけた白い花を手にする。鉢に植わって、小さな花が沢山咲いている。
「店長、この香りの良い花はなんて言うのですか?」
「ジャスミンですよ。遠山さんはご存知じゃない?」
お茶としての名前なら知っていた。
「お恥ずかしい話し、花そのものははじめて見ました。」
「男の人なら仕方ありませんよ。良い香りでしょう?」
「はい。優しい香りの中に、なんでしょう。妖艶さもありますね。」
「ジャスミンの花言葉に優雅があります。そして、官能的と言う意味もあるんですよ。」
まるで、波村さんの様だと思った。
あの細い身体に、押し込めている妖艶さ。
今まで、一人の女性をここまで気にしたことはなかった。
東君とはイトコでありながら、恋仲なんだろうか。自分が入る余地はあるんだろうか。
まともな恋愛をしなければ…。
「あ、波村さんですか?」
営業ついでに、波村さんの勤務先の最寄り駅まで来る。連絡が取れても取れなくても、ダメ元で電話する。昼時だから、手が空いていればラッキー位で。
「先日はありがとうございました。あの、もしお時間があれば、お会いしたいのですが…。」
まるで、恋を知った少年のように。
この想いを閉じ込めよう。
パンドラの箱を開けてはいけない。
深く、深く。
深淵に隠し、手の届かない所へ。
この気持ちは箱に閉じ込めよう。小さな、小さな心の箱に。
決して開けてはいけない。
それは、パンドラの箱。
思いがけない出会いで、波村橙子さんと言う女性と知り合うことが出来た。
小柄で髪が長く、綺麗で優しそうな女性。初対面なのにとても安らぐ。
電話での会話も実際に会ってからの会話も楽しく、久々に楽しい時間だった。
胡桃もかなりなついていたな…。
あの出会いから、一週間が経った。
それでも、忘れられないのはあの夜の出来事。
東君の部屋から聞こえた、情事の音。
東君に組み敷かれた、裸体の波村さんを想像する。しなやかな黒髪に色白の肌。熱に浮かされた潤んだ瞳。
声を出すのを我慢していても、時々漏れる喘ぎ声。
かなり刺激的な状況だった。
自分の中に、沸々と沸き上がる欲望に戸惑いながら、平然と日常をこなしていた。
もう会うこともないと、忘れる努力をしていた。
ふと、取引先の花屋で見かけた白い花を手にする。鉢に植わって、小さな花が沢山咲いている。
「店長、この香りの良い花はなんて言うのですか?」
「ジャスミンですよ。遠山さんはご存知じゃない?」
お茶としての名前なら知っていた。
「お恥ずかしい話し、花そのものははじめて見ました。」
「男の人なら仕方ありませんよ。良い香りでしょう?」
「はい。優しい香りの中に、なんでしょう。妖艶さもありますね。」
「ジャスミンの花言葉に優雅があります。そして、官能的と言う意味もあるんですよ。」
まるで、波村さんの様だと思った。
あの細い身体に、押し込めている妖艶さ。
今まで、一人の女性をここまで気にしたことはなかった。
東君とはイトコでありながら、恋仲なんだろうか。自分が入る余地はあるんだろうか。
まともな恋愛をしなければ…。
「あ、波村さんですか?」
営業ついでに、波村さんの勤務先の最寄り駅まで来る。連絡が取れても取れなくても、ダメ元で電話する。昼時だから、手が空いていればラッキー位で。
「先日はありがとうございました。あの、もしお時間があれば、お会いしたいのですが…。」
まるで、恋を知った少年のように。
この想いを閉じ込めよう。
パンドラの箱を開けてはいけない。
深く、深く。
深淵に隠し、手の届かない所へ。