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ここで待ってるから。
第11章 君が好き。
 頭の中がクラクラする。

 遠山さんの囁き声は、吐息と共に胸を熱くする。

 眼鏡の奥の瞳は、熱く私を見つめる。まるで、私の中を見透かすように。

 官能的なのは遠山さんの方。
 サンドイッチを摘まむ手も、コーヒーを飲む仕草も。なんて、素敵なんだろう。

 私ったら…。遠山さんが気になるのは、何故?

「あ、あの。胡桃ちゃんは元気ですか?」

 なんとか、話題を反らそうと胡桃ちゃんの話題をふる。
 遠山さんはニッコリ笑い、先程の怪しげな雰囲気は無くなり穏やかな表情になる。

「ええ。まだ、暫くはこちらにいますので。もしよろしければ、また会ってやってください。そうだ。僕のアパートで良ければご招待しますよ。」

「はい。では、楽しみにしています。」

「あの、波村さん。…橙子さんとお呼びしても構いませんか?」

「あ、はい。是非。」

「あと、一つお聞きしたいことが…。イトコの東君とはどういったご関係ですか?」

 一瞬、耳を疑う。

「恋愛はどんな形であれ、自由だと思います。歳の差も。イトコでも。倫理に反しなければ…ですけどね。…僕は…。」

 言葉が途切れ、遠山さんは静かに目を閉じる。

 この人は…。

「今、お話しする話題ではありませんね。また、今度改めて尋問させていただきますね。」

 じ、尋問なんだ。

 その後、少しだけ話をして別れる。
 ジャスミンの植木をフロアに持ち込み、デスクに置く。

「橙子さん。」

 ツカツカと沙矢子が鼻息荒く、近づいてくる。

「あの人…遠山さん。気を付けた方がいいかも。」

「?何で?」

「…ハッキリ言うけど。あの人が橙子を見る目は、雄の目よ。」

 沙矢子の発言に思わず笑ってしまう。

「ないない。それは、無いでしょう?」

「はぁ。わかってないなぁ。本当にあんたは色んな男に好かれるんだから。」

「何それ?」

「うわぁ。自分で気がついてないんだから…。天然か本当にお馬鹿さんか。まぁ、恋愛は自由よね、。奪って、奪われるのも…。だけど、あんたが傷つくのは私は許さないから。…とりあえず、またね。」

 なんか、意味深な発言に置いてきぼりなんですけど。

 沙矢子は少し私に対して、過保護なんじゃないかしら。まぁ、お互い色々あったから仕方ないのかな。

 窓から暖かい午後の日が入り、ジャスミンの香りを揺らしている。
 
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