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ここで待ってるから。
第11章 君が好き。
 大泣きしている胡桃ちゃんをなだめながら、自分の携帯を見ると、胡桃ちゃんと遠山さんの交互に着信の嵐。

「…胡桃ちゃん、携帯に出られなくてごめんね。」

 そっと、首を横に振る。

「お兄ちゃん、今日誕生日で…。色々、考えて…。こっちに来る前に、プレゼント用意したり素敵なお店で、ご飯とか…。な、のに…。」

「うん。」

「喧嘩、しちゃった…。」

 しょんぼりする胡桃ちゃんは寂しそうだけど、愛らしい。頭を撫でて、軽く抱きしめ背中をポンポンと叩く。

「…そっか。でも、遠山さん心配してるよ。」

「…橙子さん。そんな事、ない。私、お兄ちゃんのお荷物だもの。」

 理由はどうであれ、胡桃ちゃんをお荷物だなんて遠山さんは考えてはいない。

 胡桃ちゃんの事を話す遠山さんは、優しい表情をする。大切に、大切に育てたのがわかる。

「お荷物なんて、絶対にないと思う。…本人が言ったの?」

「ううん。…でも、お兄ちゃんは早く嫁に行け、とか。解放されたい、とか。思ってるよ…。私…。」

 落ち着いたのか、言葉を選びながらポツポツ話し出す。

「私を産んで直ぐに母が亡くなりお父さんとお兄ちゃんが、私を育ててくれました。子供の頃は、母がいないことを茶化してくる子もいたけど、私は寂しいなんて思わなかった。」

 夏は温かいココアを入れ、胡桃ちゃんに差し出す。

「熱いから、気をつけて。」

「東先輩、ありがとうございます。…二年前、お父さんが病気で死んでしまってから、私を大学に入れる為に一杯働いて、何も心配や不自由はさせないからって。」

 ココアの入ったカップを両手で覆い、そっと口を着ける。

「大学に入る時も、寮がしっかりしている所を探してくれたり。いつも、手紙や必要な物を送ってくれたり。だからいつもの感謝の気持ちも込めて今日、頑張ってこんな格好して、お兄ちゃんと過ごしたかったのに…。」

 ポロっと、一つ涙を溢す。

「…お兄ちゃん、好きな人がいるんだって。」

 肩を震わせ、悲しみに耐える。

「自分の事は二の次のお兄ちゃんに恋人が出来た…喜んであげなきゃ、応援しなくちゃ、とか思いながら私から出た言葉はお兄ちゃんを傷つけてたの。」


『だから、邪魔な私を寮に厄介払いしたわけね?』


「…言ってから、後悔したの。あんな、悲しそうな顔を見たのは初めてだったから…。」
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