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ここで待ってるから。
第11章 君が好き。
「…そっか。でも、胡桃ちゃんにちゃんと、応援したい気持ちがあるなら仲直り出来ると思うよ?それ飲んだら、帰ろう。俺、送るよ。」

 夏は胡桃ちゃんに声をかけ、笑いかける。胡桃ちゃんも素直に頷く。

「ありがとうございます。」

「ちゃんと、言葉にしないと伝わらない事もあるから。胡桃ちゃん、また、みんなで一緒にご飯食べましょう?」

「…はい。」




 二人がマンションを出て、しばらくするとまたインターフォンが鳴る。

「…遠山さん。」

 そこには、憔悴しきった遠山さんが立っていた。

「胡桃は?いますか?」

「…あ、夏が今、送って行きましたよ。」

 少し顔色が悪い。ネクタイを崩し、眼鏡を外し目を閉じる。

「あの、良かったらお茶でもどうですか?」

「…はい。いただきます。」

 遠山さんを部屋に上げ、お茶の用意をする。

「また、ご迷惑をおかけして…。本当に申し訳ありません。胡桃はかなり、泣いていましたか?」

「そうですね…。色々、胡桃ちゃんの気持ちは聞きました。私が思ったのは本当に、遠山さんが好きなんですね。」

 お湯を沸かし、急須に茶葉を入れる。
 遠山さんはソファに座らず、窓の外を見ている。ふっ、とダイニングテーブルの上のジャスミンが香る。

「あ、そうだ。今日、お誕生日だったんですね?なのに昼間、私の方がジャスミンをいただいてしまって…。」

 静寂の中、甘い香りがする。
 気がつくと、遠山さんは私の腕を引き抱きしめる。

 シャツ越しに、遠山さんの体温と鼓動を感じる。きつく抱きしめられ、もがいても抜け出せない。耳元に熱い息がかかる。

「と、遠山さん…。」

「…すみません。今だけです。今だけ、こうさせて下さい…。」

 顔を起こし、遠山さんを見る。
 その横顔は苦悶し、何かに耐えている。

 そっと、背中に腕を回しさする。肩が揺れ、私をさらにきつく抱きしめる。

「…僕は。橙子さん…。」

 顔が近づき、視線が混じり合う。

「貴女を好きになってもいいですか?」

 一気に顔が赤くなる。

「な…。」

「はじめて、お会いした時から。まだ、数回しか会っていないのに、こんなに惹かれるなんて自分でも思いもよりませんでした。貴女が東君と恋人関係なのは解っているのですが…。」

「は、離して…下さい…。」

 遠山さんは眼鏡を外し、顔を近づける。
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